授業「生命」
1990 年代は、「リプロダクティブ、ヘルス/ライツ」を提起したカイロ国際人口会議(1994)、女性の地位向上の指針となる「行動綱領」が採択された北京女性会議(1995)、男女共同参画社会基本法の公布(1999)などに象徴されるように、女性の人権に関連した一連の大きな動きがあった。そのような時代に、授業「生命」
(1999)は、ホームルーム活動や総合的な学習の時間での性教育の実践を集約する形で、最初は全生徒を対象とした選択科目(発展科目)として誕生した。「生命」をテーマに、野外実習(野外彫刻の調査)、芸術家や研究者による講義やワークショップ、グループ討議など、いろいろな切り口でメッセージを伝えていただき、生徒に自分の「生き方」を考えてもらうことを狙った。
「生き方」を考えることが、将来を考える動機となると考えた。事実、これまでに講座の内容そのものが直接的に進路につながった生徒も多い。「生き方」を教育するとは、「考え方」を一定の方向に導くというものではない。提示された材料(教育内容)を生徒自身が学んでいく過程で、「考え方」を身につけていくものである。したがって、この授業は、考える材料の提供(話題提供)の役割をするものであり、どのように考えるかの試行錯誤をどのように体験させるかが指導上重要になる。「生き方」を考える教育では、教科指導のように多くの知識を持った優位なものが劣位なものに一方的に教えるという図式は成り立たない。適切な材料を供給できるかどうかが大切で、指導する側がどのような経験をし、どのように生きてきたかという自らの生き方が問われることになる。授業「生命」は、後述する生命科学コースの生徒全員が履修する科目としてSSH の教育プログラムに組み込んでいる。