「教育の情報化」の推進は、時代の趨勢であり、情報社会の進展によってますます日常生活での必要性、国際化への対応の両面から必要になってきている。
日本でのICT活用は、世界的にみて非常に遅れている。OECDの15 歳生徒を対象にした「生徒の学習到達度調査(PISA) 2018年調査」でも明らかで、学習におけるデジタル機器の利用で、「学校の課題について他の生徒と連絡を取るためにSNSを使う」では30%に達しているが、「学校の勉強ためにインターネット上のサイトを見る」「コンピューターを使って宿題をする」などの他の利用に関してはすべて10%以下で、同様に、学校でのデジタル機器の利用の用途でも、「学校でネット上のチャットをする」「シミュレーションゲームで遊ぶ」の項目以外はすべて最下位である。日本の生徒のICT活用は、世界でも最下位レベルにあり、学習用途にICTはあまい活用されてこなかったというのが現状である。
2020年3月、コロナ禍で全国一斉に休校になり、多くの学校で授業どころか、生徒や保護者の連絡にさえ支障がでて、学校との繋がりが絶たれてしまった。そのことで、これまでのICT環境では、非常事態では対応できないことが判明した。文部科学省の調査では、休校開始の約1ヶ月半で、同時双方向型のオンライン指導ができた学校はわずか5%にしか過ぎなかったということがわかった。一部のICT先進校ではオンライン授業が行われたが、多くの学校ではインターネット環境、必要な機器の整備が間に合わなかった。私が勤務する宮崎県では、幸いにも感染者が少なかったので、5月上旬に対面授業が再開され、3月4月は、オンライン授業の実施に向けても準備はなされず、一切授業がなされないままで、「大きな問題はなかった」で片付けられた。オンライン授業に向けての方策は2021年9月の段階でも取られていない。逆に、コロナ禍の大きかった都市部の学校では、オンライン講義に向けての教育環境の整備がなされ、ICTの授業への活用が進み、オンライン環境をどのように生かすかという教育方法の開発を始めるきっかけになった部分さえある。地域による教育の格差がさらに開いたという印象さえある。
コロナ禍は、学校現場でのICT教育の活用を飛躍的に進めるきっかけになり、教育の情報の強力な推進力になった。海外研修ができない状況で、国際交流もオンラインで可能だということが常識になった。私自身も、遠く離れた奄美大島高校・大島北高校生物部の科学研究を手伝っている。
オンラインやオンデマンドで授業が提供できる時代が到来している時代だからこそ、あらためて、対面授業がなぜ大切なのか、対面授業で何を伝えなければならないかを再考することが必要とされているのではないか。人と人とも交流を大切にできていない対面授業に問題があることは明らかであるからゆえに、アクティブラーニングの必要性が叫ばれているのだと思う。学校教育での生徒と教師との交流を見直すチャンスと考えたい。