飛鳥新社『くじけないで』柴田トヨ から
風が耳元で
「もうそろそろ
あの世に
行きましょう」
なんて 猫撫で声で
誘うのよ
だから 私
すぐに返事したの
「あと少し
こっちに居るわ
やり残した
事があるから」
風は
困った顔をして
すーっと帰って行った
『くじけないで』の初版は2011年3月。単身赴任先から正月に家に帰って、自室の本棚から久しぶりに手にとった。
ネットで調べたら、2013年1月20日に老衰のために老人ホームで101歳で亡くなられていた。
2010年12月31日「99歳の詩人心を救う言葉」が放送されて話題になった。あれから8年。思う出すことがないままに時が過ぎていた。
私の母親は97歳。年末に肺炎を起こして、数日高熱が続いたので心配したが持ちなおした。
ふと、自分の母親は何を考えているのだろうと考えることがある。
私自身も62歳。長く勤めた職場(高等学校)を退職し、単身赴任で家を離れて、大学で教員養成の仕事についている。
定年後の生活のためという経済的な理由はあるものの、成果を上げるとかいう気持ちではなく、少しでも社会の役にたててればと思って働いている。
「あと少し・・・やりのこした事があるから」という気持ちに近いかもしれない。
こんな気持ちで生きているときに、働き盛りの論理で攻撃されるのは、精神的にこたえる。
この2年間何度も辞めようかと、「まだ・・・やり残した事があるから」と踏みとどまっている。
年配で経営的な立場にあっても、自分の面子を優先する人は多い。それがどのくらい醜いかはなかなか自分では理解できないようだ。
上手く、この世を去りたいものだ。