授業「生命」の誕生
「生命科学コース」を設定する前の段階で、女子教育には性教育が重要と考えてホームルーム活動や総合的な学習の時間を使って実践してきたという経緯がある。性教育は、「不純異性交遊」として生徒指導的に扱われた時代、女子生徒だけを対象とした月経指導教育で扱われた時代を経て、セクシュアリティー教育(人権やパートナーシップなどの人間関係を学ぶもの)へと変遷してきた。今や「性」という枠組みではなく、"「生き方」を考える材料を提供する"ための教育が必要とされる時代になっている。そのような状況を踏まえて、1998年に総合的な学習の時間の科目として授業「生命」を設定した。3)ワークショップ、グループ討議、医師、芸術家、研究者などの講義などを通して、いろいろな側面から「生命」について考える材料を提供するというものである。
今回取り組んだ本校の「女子の理系進学支援」のカリキュラム作成は、この「生命」における"生き方教育"の延長線上にある。
「生き方」を考えることが、将来を考える動機となると考えた。「生き方」を教育するとは、「考え方」を一定の方向に導くというものではない。提示された材料(教育内容)を生徒自身が学んでいく過程で、「考え方」を身につけていくものである。したがって、この授業は、考える材料の提供の役割を果たすものであり、どのように考えるかの試行錯誤をどのように体験させるかが指導上重要になる。「生き方」を考える教育では、教科指導のように多くの知識を持った優位なものが劣位なものに一方的に教えるという図式は成り立たない。適切な材料を供給できるかどうかが大切で、指導する側がどのような経験をし、どのように生きてきたかという自らの生き方が問われることになる。