背景
ノートルダム清心学園清心女子高等学校は、1886年創設のフランスのナミュール・ノートルダム修道女会を母体とした中高6年一貫教育の女子校である。県内に姉妹校として、幼稚園、小学校、大学、大学院がある。進路は、1980年代初めまで、姉妹校を中心にカトリック系大学の文系学部への進学が大きな割合を占めていたが、時代とともに理系を中心に進学先が多様化し、その状況に対応することが必要となり、1986年にコース制を導入した。大学進学という出口の進学実績を上げることを意図したもので、当時、多くの私立高校で導入されている能力別クラス編成的なものであった。国公立大学進学を目指した「特進コース」と私立大学への進学を目指した「進学コース」を設定した。しかしながら、そのコース制は魅力にはなりえなかった。
1990年代後半になって、私学では校名変更・共学化、公立では学区制の変更に先立っての教育課程変更などを含む「特色づくり」の試みが話題になり、マスコミでも大きく取り扱われた。本校でも、これまでのコース制に換わる教育内容を起案するためにプロジェクトチームを組織し、これまでの教育内容の再検討を行い、進路実績という成果を目的としたものではなく、"どのような教育内容が新しい時代に求められているか"という視点で教育内容を再構築した。その結果、2006年度から「生命科学コース」、「文理コース」からなる新たなコース制を導入した。「生命科学コース」、「文理コース」の新設は、"どのような教育内容が新しい時代に求められているか"という視点での教育改革であり、さらに具体的な女子校の社会的な使命として、「どのような教育内容で女子の理系進学を支援できるか」の問いに答えることが最初の課題だと考えた。2006年文部科学省SSH事業に、研究テーマ「生命科学コースの導入から出発する女性の科学技術分野での活躍を支援できる女子校での教育モデルの構築」で私立女子校として全国で初めて採択していただいた。そして、「科学課題研究」を中心に据えたカリキュラム開発に着手した。
本編では、2006年度から2016年度までの取り組みを中心に報告したい。なお、教育実践については、文部科学省スーパーサイエンス事業(1期2006年度から5年間・2期2011年から5年間)の助成を受けて実施してきたものである。現在、2016年度から3度目(3期5年間)の指定を受け、新たな課題に取り組んでいる。