(1)活動の概要
<両生類・爬虫類>1989年度からサンショウウオやアカハライモリなどの有尾類の研究に取り組んできた。岡山県中南部に生息するカスミサンショウウオの研究から着手し、有尾類の繁殖方法の開発を継続して研究してきた。また、帰化種のミシシッピアカミミガメの行動調査(2009年度から)、生物工学的な手法でのアカハライモリのクローン作成(2013年度から)にも挑戦している。
研究の進捗状況は、カスミサンショウウオ、オオイタサンショウウオの飼育下の繁殖方法については、ほぼ確立できた。また、ミシシッピアカミミガメの行動調査は、市街地近郊の水田地域では行動圏の中心に水路がコンクリート化されない環境があることが解明できた。また、在来種のクサガメを駆逐している可能性があることが判った。アカハライモリのクローン作成については、核移植後の賦活をカルシウムイオノフォアや精子懸濁液で行い、胞胚まで発生させることに成功した段階にある。
生物教室ではこれまでいろいろな種類の両生類の飼育を試みてきたが、現在は研究に関連した種のみを継続飼育している。2016年2月で、サンショウウオ科のオオイタサンショウウオ、イモリ科のアカハライモリとシリケンイモリを維持している。
<酵母>2007年度から研究を開始したが、当初はいろいろな花から野生酵母の菌株を採取し、種の同定をして比較することによって、花の種と酵母の種の関係を生態的的に解析することを目指した。しかしながら、菌株の採取ができる花が種としては少なかったので、菌株が採取しやすかったツツジの花に限定して、広い地域から菌株を採取し、その形態、染色体数、リボソームRNAをコードするDNAの塩基配列(18SrDNA)、電気泳動核型を指標に分類することに着手し、さらに、その化学反応の能力(アルコール発酵能、セルロース分解能、キシロース資化能)を調べ、人間生活に有用な菌株を見つけることに挑戦した。
2015年度は、アルコール発酵能・セルロース分解能・キシロース資化能の3つの能力を同時に持つ酵母として、塩基配列を同定してMetschnikowia pulcherrimaのを見つけることができた。Metschnikowia pulcherrimaは、その仲間がグルコースやガラクトースを基質としてアルコール発酵をする能力を持ち、かつセロビオース(セルロースをセルラーゼで分解すると生じる)やキシロースを資化する能力を持つことが確認されている。そのため、実際に花酵母を用いて、木質バイオマスを原料としたバイオエタノールの生産に利用できると可能性がある種だと考えられる。次年度は、その有用性について検証したいと考えている。
<森林>2006年度実施している森林調査(生命科学コース1年生対象の学校設定科目「自然探究Ⅰ」で行っている森林調査のデータを解析して考察するという形で研究を進めてきた。今年度は、これまで行われていなかったクヌギ人工林を対象として調査を実施し、その結果をこれまでの調査結果と比較することで、同じ樹種でも人工林と天然林という違いでどのような差があるのかを比較し、これらの結果から、どのような森林が効率よく二酸化炭素を吸収しているのかを明らかにすることを目的とした。
また、研究成果を交流に生かすことを考え、マレーシアのUTHM大学の大学生大学院生との合同調査や久米島西中学校での環境学習を実施した。
(2) 校外での発表実績
<両生類>
2015年9月19日 日本動物学会第86回新潟大会高校生によるポスター発表・優秀賞
「イモリのクローン作成を目指して」
2015年11月17日 International Conference on BIODIVERSITY 2015
Development of Techniques for Cloning Amphibians by Nuclear Transplantation
2015年11月17日 International Conference on BIODIVERSITY 2015
Development of Techniques for Captive Breeding of Endangered Salamanders
2015年11月17日 International Conference on BIODIVERSITY 2015 Best Poster Award
The Impact of the the Red-eared slider, Trachemys scripta elegans, on Native Turtle Species in Japan
<酵母>
2015年8月6日 スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会 ・ポスター賞、生徒投票賞
「バイオエタノール製造に利用できる酵母を求めて」
2015年8月4日 第5回高校生バイオサミットin鶴岡 ・農林水産大臣賞
「バイオエタノール製造に利用できる酵母を求めて」
2015年11月1日 第54回日本薬学会日本薬剤師会日本病院薬剤師会中国四国支部学術大会・優秀発表賞
「バイオエタノール製造に利用できる酵母を求めて」
<森林>
2015年5月16日 中四国地区生物系三学会合同大会(愛媛大会)・生態・環境分野優秀プレゼンテーション賞
「ブナ人工林は天然林より多くのCO2を吸収するのか」
2015年11月17日 International Conference on BIODIVERSITY 2015 Best Poster Award
Forest diversity and CO2 absorption
2015年12月12・13日 第13回高校生科学技術チャレンジ(JSEC)最終審査・優等賞
「CO2をより多く吸収するのは天然林か、人工林か?」