2006年度から文科省SSH事業の指定を受けて、「生命科学コース」を設定して、女子生徒が生物学、医学、薬学。農学などの生命科学分野へ進学することを応援してきたが、「生命とは何?」と尋ねられて、正直困ってしましった。まずは、生物教室にある代表的な生物学事典をひいてみた。以下を読んでもよくわからないので、自分なりに生物学を教える教員の立場で考えてみようと思う。
(岩波生物学事典第4判p765より)
生命(英 life、独 Leben)
生物の本質的属性として抽象されるもの、その属性により、個体および種が保存され、長い間に環境との関係において進化が起こり、しかも成bつが合目的的な存在として成り立ちたちえている。これらのこと自体を生命の本質的属性とみなすこともできるが、それらを可能ならしめている土台には情報の伝達とエネルギーの方向づけられた変換とがある。このような性格や細胞構造・タンパク質の存在が宇宙のいかなる生命にも(地球外生命が存在するとして)普遍的なものであるかどうかは確言できない。それはさておき、以上によって生命の定義が明確になされているかどうかには、なお問題がある。生命の語なしに生物学の体系を組織することもまったく不可能とは言えないが、生命の語は生物学者によって慣用されており、生命体、生命現象とか生命の起源とかの語はごく普通に使われている。生命とはなにかについての諸説を生命観あるいは生命論という。古くから生気論的観念論に対し近世(17世紀ごろから)において機械論が生まれ、また20世紀初めからは全体論、その一種としての新生気論や有機体論、または弁証法的唯物論にもとづく生命論が唱えられた。現在では、生物を自動制御機械と類比することにもとづく新たな生命機械論有力であり、それは有機体論とも関係づけられている。