授業「生命」は、学習指導要領に「総合的な学習の時間」が導入される前の段階で1999年度から開講している。西松先生は、1999年の開講時から17年間、講義を担当していただくだけでなく、新たな講師を探している際に紹介してくださるなど、この授業「生命」の礎を担っていただいた先生である。SSH事業を2期10年も年度末になり、今年度最終回を西松先生にお願いしたのは、これまでの感謝の気持ちを伝えたいと考えたからだ。これまで、僕の教員として歩んだ記憶に、テニス部、生物同好会、生徒会活動、大学院修士課程での研究、大学院博士経緯での学位(博士・理学)取得などが残っているが、SSH事業に取り組んだこの10年が一番大きく刻まれている。多くの人と出会い、労力を惜しまないレベルの協力者を得たし、文部科学省、数多くの大学、高等学校を訪問し、教育視察でアメリカ、中国、韓国にも行った。生徒を引率して、マレーシア、西表島、座間味島、久米島にも行った。多くの学会や科学研究のコンペにも参加した。こんなに多くの経験をした。学校教育(特に科学教育)について考える機会をこれだけ多く得た教員は全国的にみても少ないのではないかと思う。そして、教育実践の新たな試みを数多く施行させていただいた。このことだけを考えるとひょっとすると全国で一番幸福な教員かもしれない。しかしながら一方で、実際の教育現場では、経験で得たことを学校教育の改革に還元しようとしても、保守的で大きな変化をきらう傾向の強い学校においてはそう簡単に進まない。外部からの助成金を受け教育研究で、学校への負担を軽減する事業であり、成果を上げ文科省から高い評価を上げているにもにもかかわらず、妬みや嫉妬があったり、自分の都合が合わないということで「好き勝手できていいね」とか「偉そうだ」とかの言葉を浴びせられることもある。生徒は科学研究に取り組むことで、興味の幅を拡げ前向きに学ぶ姿勢を身に着け、学会や全国の科学研究の大会に参加して科学に取り組む多くの高校生に出会うことで、人間的にも成長する。そして、高校入学当初は本人も保護者も想定しいなかった進路に進むこともおこっている。文部科学省は、SSHで進めているこのような科学課題研究の効果を認めて、高等学校学習指導要領(平成21年3月)に「理科課題研究」を設定したのではないだろうか。少しでも学校教育にたずさわる人に、課題研究の重要性、SSH事業で進めていることへの理解が進めばいいと思う。
西松先生の発生生物学の講義のまとめ。①卵は最初に性質の異なる細胞をつくる、②異なる細胞が相互作用(融合)することにより臓器や組織が形成される、③発生過程で起こる作用は生後も繰り返し利用されている。