初版の2005年度の「大切なもの」の2ページ目に僕自身のメッセージを書かせていただきました。「学問には正解もなければ範囲などというものもない。むしろ既存の正解と既存の範囲から逸脱するところから生まれる。学校で真面目に勉強をすれば不可避的に生ずる疑問や興味は、追求していくと教科書の範囲から逸脱することは避けられない。しかしながら、現在の入試による進学システムでは教科書の範囲を超えて勉強することは、不利になることはあっても有利になることはない。受験生は胸に抱えた疑問や興味を押し殺して、一定の範囲内の知識だけを完全に覚えることを要求されることになる。十代の最も頭の柔軟な時に、重箱の隅をつつくようなことをしなければならないのは辛いことである。だからといって「勉強なんてつまらない」と学問から離れていくのはあまりにももったいない。バーバラ・マクリントック(81歳でノーベル賞受賞)が、その人生を"知的な感動"で支えたように。その"知的な感動"を大切にして、前向きに学び続けて欲しいと思う。」
冊子を作成してから9年の歳月が流れました。SSH事業を主任として企画運営して9年、来年度は第二期の最後の年になります。世代交代しなければならない時期にさしかかってきたのではないかと感じています。そのこともあって、これまでの取り組みのまとめとして、昨年『大学時報』(2013年9月号)の特集記事として「SSH指定から7年、その成果と課題(私立女子校で理系進学支援をどのように展開したか)」を書かせていただきました。「女子校は今の社会でも必要なのか」の問いから出発して「これから取り組まなければならない課題は何か」まで、データを交えて、まとめさせていただきました。科学課題研究、大学との連携、英語と理科での教材研究、交流会の開催などある程度の成果を上げることができましたが、一方で学校内での協力体制を構築することの難しさ、また、私立学校としてはSSHでなくなったときに、これまでの成果を発展させていけるかどうかについては新たに課題になることも判りました。