10年目を迎えた本校のSSH事業について、SSH冊子のあとがきを加藤茂明先生からいただいた。
生物の授業や講演には高校時代興味はあったが、大学に入学してみて初めて生物学の範囲の多様性と広さに改めて驚いた記憶がある。生物学は、理学部生物系は勿論だが、自分が進学した農学部のみならず、医学部、薬学部、獣医学部にわたって基礎言語となっていて、化学・物理・数学を念頭に置いた学部である理学部や工学部に比べ、より受け皿が広いのである。余りにも幅広いがために、生物系大学研究者は本当に狭い個々の専門領域に特化せざるを得ない。その点では本SHH事業担当教員が取り組んでいる専門課題は多種多様であり、各々が高校のレベルを超えてむしろ大学教員が行っている学術研究に近い。中でも理科教室で絶滅危惧種のサンショウオを営々と飼育し、更にその繁殖を分子レベルまで解析し種保全に務めようとする試みは貴重なものであり、高校生のみならず生物系研究者にとっても極めて魅力的である。一見女子高生が、最も敬遠しそうなサンショウウオの飼育を嬉々としている達の様子は、教育現場としても一見の価値がある。
本SHH事業には国外ツアーという国際性も盛り込まれており、理系女子の科学啓発の試みとして際立っている。大学進学前に環境問題から先端遺伝学まで、極めて広い範囲の生物学に触れることが可能なのである。大学で生物系の学部に進学した者より、遥かに幅広い知識を得、生物学の教養を涵養することが可能なのであり、本事業はその重要な羅針盤を提供している。これだけのプログラムを作り上げた秋山先生を中心とした清心女子高校の理科教員の皆様の情熱、そしてこれを全校挙げて支援しておられる小谷恭子校長以下全教職員の皆様に運営委員を代表して敬意を表したい。本SHH事業の成功体験から、今後も清心女子高校から更に先導的かつ革新的な教育プログラムを発信頂けることを心から期待している。そして1人でも多くの次世代を担う理系女子に、サイエンスの面白さを益々啓発して頂きたい。