SSH事業に取り組んで10年目になりました。確かに生物準備室の周辺の風景も人間模様も変わりました。廊下にはいろいろな発表会で入賞した課題研究のポスターが貼られ、放課後の生物教室は、毎朝夕に生徒がイモリやサンショウウオの世話、課題研究の実験に来ています。SSHに関わっている生徒の学習に取り組む姿勢、理系への進学状況は変わりましたが、学校全体に影響するような教育改革までできたかというとそうではありません。文部科学省のヒヤリングで高い評価を得ることができましたが、SSH事業に関わってる先生方、SSH事業で進めた教育内容に参加した生徒に影響があったとしか言えません。まだ多くの先生方は無関心なままというのが実態でしょう。この10年間、僕自身は出張や調査以外は土日も含めて毎日生物準備室、生物教室に来ました。その間、理科担当以外の先生が生物教室を覗かれたことはほとんどないし、したがって土日に来て頑張っている生徒たちに声をかけてくださった先生もいないというのも現実です。なんとか無事にSSH事業を進めることができたというホッとした気持ちと、僕にとってのこの10年間はなんだったのかという気持ちが入り乱れているというのが今の心境です。そして、そんな気持ちを抱きながらも、この年度末まで責任をもって最善を尽くして頑張ろうと考えています。
日本は発展した国ですから、学校も社会も人それぞれで多様性があっていいという認識で、いまさら学校や会社に帰属意識は必要ないて考える人が多いのかもしれません。しかしながら、一方で、他人の苦しみや努力を認められない、つまり"人の立場に立って考えられない"人が増えているような気がするのは僕だけでしょうか。学校教育が日本の将来の社会に与える影響は大きいと考えています。