日本の合計特殊出生率は2005年に過去最低の1.26を記録した。少子化と高齢化が経済に大きな影響を与える時代に突入している。女性が子どもを産まなくなったこともきっかけの一つだが、女性が子どもを産めば解決するような簡単なものではない。ライフスタイルの変化やそれを支える社会サービス、医療技術の進歩など、原因は複雑に絡み合っている。ただ言えるのは、女性が社会構造に大きな変化を与えている時代になってきたということである。つまり、女性パワーを取り込んだ社会システムの構築が必要とされる時代になったと考えられる。これまでの「女性の才能を伸ばすことを制限している」「子どもを産み育てにくくしている」構造に風穴を開け、女性の活躍を下支えし、支援する学校教育プログラムが必要である。特に日本は国際的に比較しても「科学分野で活躍する女性が非常に少ない」という問題がある。この問題の解決にもつながる変革が必要な時代が到来している。
【規模】
2006年度から教育プログラムに着手して2015年度でちょうど10年目を迎え、生命科学コースに限定されたものから学校全体の生徒に関わるものに拡大してきた。また、社会にその成果を情報発信すべく、全国の中高生や教育関係者と共有するための交流会として、2009年度から発表者を女性に限定した「集まれ理系女子!女子生徒による科学研究発表交流会」を始めた。目的は、①科学研究に取り組んでいる生徒の成果を広く社会に知っていただくこと、②女子生徒のリーダーシップを養成することの2つである。中高生に混じって、若い女性研究者にも同じ形式でポスター発表していただいているというのが大きな特徴で、身近なロールモデルになってくれることを期待している。
第1回から第5回までは地元で開催してきたが、今年度(第6回)は、交流の輪を広げることを考えて京都大学で開催し、353人に参加していただいた。次回は慶應義塾大学で開催することが内定している。「女子生徒の理系進学支援」を、全国に発信していけるイベントに育てたい。
【対象】
最初の段階では、生命科学コースの生徒を主対象にして、科学の課題研究に向けて教育プログラムを構築していった。実施3年目で「生命科学課題研究」の取り組みが、研究発表会や学会での受賞や進路の成果につながったことをきっかけに、文理コースの生徒対象に、化学分野を研究テーマにした「物質科学課題研究」と、数学・物理分野を研究テーマにした「数理科学課題研究」が生まれた。現段階では、高校2年生の段階で、どの生徒も選択すれば科学分野の課題研究を選択できるシステムになっている。
【成果】
2006年に文部科学省スーパーサイエンス事業(SSH)の指定を受け、SSH主任として9年間関わり、「女子生徒の理系進学支援」をテーマに取り組んできた。2009年文部科学省ヒヤリング(第一期)で「現段階では、当初の計画通り研究開発のねらいを十分達成している」の評価をいただき、2011年からさらに5年間の継続再指定を受け、文部科学省ヒヤリング(第二期)でも、同じく高い評価をいただいた(2011年度指定校38校で「ねらいを十分達成している」と評価されたのは9校、そのうち女子校は本校のみ)。
また、生徒の科学研究においても、全国規模の科学コンテストで上位の成果を上げることができた。科学研究で芽が出そうもない地方の女子校でも、教育プログラムを刷新することにより、たった5年間で科学研究で成果が出せる学校に変容することができることが証明できた。