年に2回、運営指導委員の先生方に集まっていただいて、生徒の課題研究やSSH事業報告をさせていただいています。課題研究については、第1回(7月)は、生物分野、第2回(今回)は、化学・物理分野の発表になっています。
【アドバイスをいただいた先生方】
阿形清和:京都大学大学院理学研究科教授
宇野賀津子:ルイ・パストゥール医学研究センター基礎研究部室長
佐野淳之:鳥取大学大学院農学研究科教授
西松伸一郎:川崎医科大学分子生物学教室講師
秦野琢之:福山大学生命工学部長
坂東昌子:NPO法人知的人材ネットワークアインシュタイン理事長
太田雅也:福山大学生命工学部教授
井上浩義:慶應義塾大学医学部教授
菊田安至:福山大学生命工学部教授
米澤義彦:鳴門教育大学名誉教授
佐藤伸:岡山大学異分野融合先端研究コア准教授
【運営指導委員会の内容】
秦野委員:秋山先生から1年生の実験指導を依頼されて10年が経った。学生募集などの利害を考えず、純粋な研究の指導という点で続けてきたのは良かった。課題研究も色々な分野に広がっていくのは良いが、分散しすぎて目が届かないところもあるかと思う。賞を沢山もらうのは良いが、賞をもらうのが良い研究という訳ではないということを忘れないで欲しい。
佐野委員:森林実習を依頼された時、高校生は初めてなので、大学生のミニチュア版をやろうと考えていた。始めてみると、生徒の意欲が高かったので、大学生でもやっていない本格的なものに変えた。毎年、新しい1年生が来るので、場所を変えてデータを集めて比較すると、ある法則が見えてきて、大変レベルの高い課題研究になった。今、改めて積み重ねが大切だと思う。
宇野委員長:最初は秋山先生が一人で頑張っていたという印象だったが、ここ数年、様々な先生に広がってきて、この後も継続できると思う。生徒たちの研究室での連絡性・連続性があり、これは非常に大切だと思う。また、高校の時に身につけた観察力は必ず将来の研究活動に役に立つはずだ。
坂東委員:初めて来た時の英語の発表で、質問したら英語で答えたのでびっくりした。英語ディベートも勉強できて、清心の生徒は恵まれていると思った。英語教育には今後も頑張って欲しい。物理・化学に比べて生物は多様で未知なことが多いので、高校生にはやりがいがあるだろう。意欲的に新しいことに取り組んでいるのに感心した。中高の先生が研究活動をして大学と連携することは非常に良い。新しい発見をどう見つけるかを根付かせると日本の教育も少しは良くなるかと思う。
阿形委員:今日の発表を聞いて、2つアドバイスをする。一つ目は、いかに客観的にデータを集めて数値化するかということ。主観で言っても説得できない。統計処理の方法を専門の先生にアドバイスしてもらった方が良い。もう一つは中高一貫の良さを活かして、高校生が中学生に色々なアドバイスをしていくこと、この二点である。
西松委員:秋の研究成果発表会で、中・高校生が活発に手を上げて質問しているのを見たときは、初期の頃とは格段の違いだと思った。ぜひ第3期までやって欲しい。SSHの卒業生と時に学会で会って話し合う。卒業後のこうした繋がりは大切にしたい。研究成果発表会での卒業生のコメントは皆の興味を惹く。今後もSSHの卒業生が社会で活躍して欲しいと思っている。
菊田委員:中学生の海水をテーマにした発表は、わくわくしながら聞いた。大学生相手では弱い部分を色々詰問して、萎縮させてしまうことがあるが、この中学生は自分達で疑問に思うことを自由にどんどん研究を進めている。ぜひこのテーマをそのまま育ててもらいたい。
田島委員:委員になった時は、サンショウウオやカメの研究が進められ、デンジソウはこれからという様子だった。ここまでよく発展したと思う。今年の全国大会での受賞は、自分たちで装置を開発し、数値化した所が評価されたと伺っている。獣医系の大学ではどうしても国家試験を頭においた講義内容となるので、生徒と一緒に疑問について考えている清心の先生が羨ましいと思う。
佐藤委員:発表を聞いて、よくトレーニングされていると思った。このまま大学に入学したら、むしろ物足りなく感じるかもしれない。OGも多くいるので、その力を活かせたら良いと思う。また賞を取ることは目的ではなくても、その生徒の成功体験として意味がある。3期目は拡大路線でいってはどうか。
太田委員:以前から福山大学での、1年生の実習指導で関わってきた。自分の専門は化学であるが、今後、課題研究で幅を広げるとしたら化学分野ではないか。中学生の海水の塩分濃度の話の中で、塩分とは何か、NaClか?他のものが関われば数%かわるだろう。また、蒸発させるなら蒸発皿を使用すべきではないか。高校生の銀の話については、何ができたのか説明できるようにしないといけない。研究を進めるときに疑問を持つことが大切である。そして科学的な根拠が無いと質問に答えられない。
米澤委員:課題研究では、なぜそれをやるのかを、自分の言葉でうまく説明できなければならない。そこは指導者が上手に指導する必要がある。海水を蒸発させていた中学生は、蒸発皿を知っていたのではないか。フラスコ使用は自分たちの考えだったのか疑問が残る。普段の授業の成果が研究発表で出てくることが大切だ。大きな賞は生徒が自分たちでちゃんと考えてやったものかどうかがポイントで、教えてもらったものはすぐわかる。SSHは全校あげてやっていく体制が望まれる。
井上委員:清心のSSHが良いことは前提として、文系の生徒も課題研究に関わっているのは素晴らしい。文系にもサイエンスリテラシーを身につけさせる必要がある。今後は幅広い生徒に理科を周知してもらいたい。また地域にサイエンスを広めることも大切で、清心がコアとなって、高校から中学校へ、中学校から小学校へというように科学教育を伸ばしていくことを期待する。
後日、運営指導委員会に出席できなかった中島由佳(大手前大学)委員より、以下の講評・助言をいただいた。
中島委員:アンケートの取り方、処理の仕方について助言する。主催する研究会の参加者が増加したことは良いことだが、単に良いで終わらせず、ネットワークの広がりという点、社会に対する普及効果という点、SSH校だけでなく、非SSH校の理科教育向上に資することができたという点が必ずあるので、そうした部分がデータで証明できるとよい。文科省による第1期の評価、第2期の中間評価が高いが、言わばリーダー的な立場を有効に利用して、成果を普及していって欲しい。