「生命科学コース」の生徒たちはどのように育っているか
「直接触れる体験」の重視した学習の中で、リーダーシップの養成、国際性の育成、ロールモデルの提示を盛り込んで取り組んできたSSHの教育プログラムの成果はどうだろうか。後で示した“SSH研究開発の成果・生徒の変容”のデータで判断していただきたい。
今年度は、特別な地域に出かけるのではなく、学校周辺の自然に目を向けるような取り組みを始めている。「総合的な学習の時間」で、本校のある二子の丘の植物観察、周辺の水田地域の動物観察、さらに課題研究として、学校周辺に生息するカメに注目して、クサガメと帰化動物のアカミミガメの標識再捕法とテレメトリーによる行動調査を行っている。これからも、“直接触れる体験”を重視した教育を進めていきたい。
平成14年の小学生対象の調査(中村博志氏他)で「一度死んだ人が生きかえることがあると思うか」の問いに、約3分の1が「ある」と答えたことが新聞で報道され、子どもの生命に対する感覚の変化に対して「心の教育」の重要性が叫ばれた。その背景として、小学生に「自然体験・社会体験など子どもの学びを支える体験が不足している」ことが主張された。自然体験が不足しているのは小学生だけだろうか。私は、中学生や高校生、大学生、そして、大人にもあえて自然体験の機会をつくることが必要な時代が到来していると考えている。
【参考文献】
松村泰子編『理科離れしているのは誰か』日本評論社2004
秋山繁治・田中福人「清心女子高等学校 生物部の歩み」『生物工学会誌』第86,pp415-416,生物工学会,2008.
秋山繁治「有尾類の教材化について・環境に目を向ける教材としての利用」『岡山県高等学校教育研究会理科部会会誌』第47号, pp20-28,岡山県高等学校教育研究会理科部会,1997.
秋山繁治「有尾類の教材化について(2)・胚の発生の授業展開」『岡山県高等学校教育研究会理科部会会誌』第55号,pp26-33,岡山県高等学校教育研究会理科部会会誌,2005.
梅村錞二・秋山繁治「ため池の脊椎動物(魚と両生類)」『水環境学会誌』Vol.26,No.5,pp18-21,日本水環境学会,2003.
秋山繁治「有尾類の保護を考える」『岡山県自然保護センターだより』Vol.14 (3),pp2-6,岡山県自然保護センター,2005.
筆者名 (和文)秋山繁治 (英文)Shigeharu AKIYAMA
所属機関 (和文)清心女子高等学校 (英文)Seishin Girls’ High School
論文名
(和文)実際に“触れること”が科学的思考を育てる
(英文)Developing Scientific Thinking through a Program that Provides “Practical Experience” in Nature