今日、S出版社の方が教科書と副教材の説明に来られた。本校の生物の教科書は今まま約10年間本校はS社のものを使ってきたが、24年度1年生から第一学習社「生物基礎」に使うようになった。第一学習社の教科書は他社(304ページ)に比べて圧倒的に分厚い。「あんな分厚い教科書は使えない」と公立高校の先生の話題にはなっていたが、今日の説明では「我がS社(224ページ)が好評で採択が増え、第一学習者社のものは岡山県の公立高校ではほとんど採用していない」という話であった。「生徒に負担が大きい」、「教える方も大変」・・・という言葉が聞こえてきそうである。文科省SSH校でも、生徒は「受験勉強以外に課題研究をするのは負担」、教員の方も「課題研究の指導が大変」という意見が多いと聞く。本校は、SSH6年目だが、僕自身は課題研究が設定されて初めて、理科教員としての居場所が見つかったと感じているし、身近な生徒は、課題研究に前向きに取り組んでくれ、進路についても真剣に考えるようなっているので、手ごたえを感じている。私には、高校生の時から「課題研究をするのが負担で邪魔」と考える生徒が今の大学や企業での研究でやっていけるとは思えない。「好きだから・・・」、「好奇心が抑えられないから・・・」という気持ちを持っていないと耐えられない世界だと感じている。科学を志す生徒には前向きに挑戦する気持ちと忍耐心をもって欲しい。だから、本校に設置した「生命科学コース」の2012年度からの生物の教科書はあえて第一学習社の『生物基礎』を使うことに決定した。著作者の一人、京都大学大学院教授阿形清和先生に、教科書を執筆した意図について質問した。以下は、阿形先生の意見である。
「日本の教育がダメな点は、学問を面白いと思わせる以前に詰め込み教育に走ってしまう点である。この受験を前提とした詰め込み主義の流れを変えるために、教科書は、本人が面白いと思うきっかけを与えることを重視すべきである。そのために、厚くなろうとも、興味をひく話題をたくさん提供してひとつでも興味のある話があれば、子供達は自分から生物を勉強するようになる。われわれの教科書は、それを目指すべきといって、トッピックスがたくさんとなり、分厚くなりました。 子供達にはモチベーションを与えて、自分で勉強するようにする教育をめざすべきで、われわれのつくった教科書は、分厚いからといって、それだけ詰め込めとはいっているけではなく、幅広いトピックスを紹介することで、少しでも多くの高校生が生物学を面白いと思って勉強するようになることを期待して作った次第です。高校の先生方がそのあたりの精神性をご理解して(分厚くても学生が面白いと思うトピックスに出会う機会を増やした)内容を取捨選択できる教科書を採択してくれることを切に願います。」