3月11日の北海道のコンベンションセンターでポスター発表をしてる最中に地震があった。天井からつるされた大きな照明などが揺れたので怖がっている人もいた。夕方、ホテルでテレビにスイッチをいれて初めて震災の詳細を知った。12日の神戸空港行の飛行機で、遅れはあったものの無事に帰ることができたのは幸運であった。12日の日本生態学会のプログラムの一部は中止され、参加者の帰路の交通の確保のための集会が緊急に開かれていた。
優秀賞
コンクリート化された水田地域のクサガメとミシシッピアカミミガメの行動
【要旨】
外国から移入されたカメの生態系への影響が心配されている。近年,カミツキガメやワニガメなどがヒトに危害を与える可能性があるということで,特定動物に指定されているが,カメの仲間で生態系への影響を最も懸念されているのはミシシッピアカミミガメである。その理由は,「ミドリガメ」という名で,ペットとして多い時は年間100万匹以上が日本に輸入され,把握できないほど多くの個体が全国各地に生息している状況に陥っているからである。
この状況を踏まえて,その行動を解析し、ミシシッピアカミミガメの在来種のクサガメへの影響を調べることを目指した。方法は,(1)標識再捕法(捕獲個体を標識し、再捕獲できた場所を記録)と(2)テレメトリー法(小型発信器取り付けた個体を受信機で追跡)を使った。調査データから①行動範囲,②移動パターンを解析した。
今回の調査で分かったことは,①現在の両種の生息数の比は約1:1の比にまで至っており,ミシシッピアカミミガメがクサガメを駆逐している状況にある。②ミシシッピアカミミガメの方が行動範囲が広い,③両種ともコンクリート化された水路より,コンクリート化されていない水路を好む傾向があること等が判った。
優良賞
地球温暖化防止における森林の役割(様々な森林による二酸化炭素吸収量の推定)
【要旨】
CO2の増加による地球温暖化や人間活動による生物多様性の危機が問題となっている。このような地球環境問題に対して森林の役割を明らかにすることを目指した。方法は、人工林および遷移段階が異なる森林で、樹高・直径・樹齢を5年間調査し、そのデータから樹木による1年当たりのCO2吸収量を求め、さらに樹木の種多様性や森林の構造との関係を解析した。
結果は、CO2吸収量は、1年間で人工林では100m2当たり140kg、天然林では100 m2あたり260kgになった。天然林は人工林と比べて、樹種の多様性が高く、樹高の高低に大きく差がある複雑な階層構造を示した。その結果、光合成を効率よく行ってCO2吸収量が多くなったと考えられる。また、アカマツは他の樹木と比べてCO2吸収量が高いことがわかった。これは、直径や樹高の成長量が大きいためCO2吸収量も多くなったと考えられる。
結論として、天然林は人工林に比べてCO2吸収量が多いことがわかった。日本人1人が1年で家庭で排出するCO2は約2.0tなので、人工林100m2で処理できるのは約0.07人分、天然林でも約0.13人分にしかならない。CO2の急激な増加が環境問題になっているが、その解決には、自然度の高い森林生態系を守っていくとともに、私たち自らがCO2の排出を抑制する生活に変えていく必要がある。