詩集「略歴」は、初版第四刷が1980年10月25日にでている。本の帯には「石垣りん最新詩集」とある。一刷が1979年なので、詩集として売れていたのかもしれない。僕は大学をでたばかりであった。久しぶりに、本棚から取り出して眺めてみた。「夕鶴」という詩が目にとまった。
それが
はじめての約束だった。
しあわせとか
愛とか
希望とかいったものを
与えるかわりに
けっして私を見てはならないと。
お前は見た。
お前の好奇
お前の欲
お前の乏しい智慧。
私はもう見られた姿のままで
お前の所にとどまることは出来ない。
さようなら
そういったのが
物語の鶴ならよかった。
地球が
人間から遠ざかってゆく。
ちいさく
ちいさく
なる。