• ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室
  • ぼうぼうどりの生物教室

全国学校飼育動物研究大会の発表要旨

2010年1月 3日

岡山県内小学校の飼育動物の現状分析
鈴木美有紀 [指導教官 秋山繁治](清心女子高等学校・生命科学コース)

【研究背景と目的】
 学校で動物を飼育することの意義を考えるために、本校では先輩たちが総合的な学習の時間(授業「生命」)の課題として、1999 年から出身小学校を訪問して学校飼育動物についての調査レポートを作成することに取り組んできた。
これまでの調査で、小学校に何らかの小動物(学校飼育動物)が存在することが当たり前になってはいるが、生徒の立場からすると「意識する存在ではなかった」ということがわかった。過去の記憶としてほとんど思い出もなく、逆に、マイナスのイメージさえある状態で、動物にとっても好ましい状態にないことも明らかになった。そして、現状は、学校飼育動物の教育上の意味を問い直すことなく、ニワトリは鳥インフルエンザの影響や餌代などの負担、休日の世話が面倒なことなどが原因となって、小学校での学校飼育動物の数は減少していると推測できる。
そこで、私たちが学校飼育動物の現状を調査・分析して、教育関係者だけでなく、一般市民の皆さんにも「学校飼育動物の意義」を再考していただけるようなデータを提供したいと考えるようになった。これまで岡山県では、一般に公開された全小学校を対象にした学校飼育動物調査が実施されたことがないので、今回は現状を把握するためのアンケートを実施し、その結果を分析した。

【学校での位置づけ】
総合的な学習の時間(授業「生命」)の課題として実施し、結果は、本校の課題研究発表会(清心女子高等学校SSH研究成果発表会)で発表している。また、インターネットで、授業「生命」担当者のHPブログ上で、生徒の調査レポート及び実施内容、調査結果を公開している。

【具体的な実施内容】
 2008 年2 月~ 3 月にかけて、岡山県内の全小学校を対象に学校飼育動物についてのアンケートを実施した。並行して出身小学校での現地調査も行った。アンケートについては 2008 年8 月までにデータ整理、2009 年6 月までにデータ分析、調査結果をホームページに公開し、その感想なども参考にして、結果をまとめた。アンケートは436 校に配布し360 校から回答を得た(回収率82.6%)。

【結果】
① 動物の飼育状況と飼育している動物
 93%の学校で動物を飼育していた。最も多かったのはウサギで約64.7%。1 校あたり平均飼育頭数は3.7 頭、最高で40 頭飼育している学校もあった。魚類を飼っている学校は61.9%であった。
② 飼育動物の目的と授業での利用
80%が「生命尊重と責任感の学習」が目的。授業では、「理科」と「生活科」で主に利用されている。
③ 飼育をやめた動物
 飼育されなくなっているのはニワトリなど鳥類、次にウサギなどの哺乳類が特に多い。かつて鳥類を飼育していた学校の44.7%がやめている。飼わなくなった理由は、「死亡した」(45%・73 校)が最も多く、次いで「鳥インフルエンザの予防」(11%・17 校)であった。
④ 飼育上の諸問題
 平日は生徒と教師が共に世話をする場合が多いが、休日は教師のみで世話をする学校が約8 割であった。「死後の処理」については、大半は「埋葬」であったが、「ゴミとして処分」が19 校(6%)あった。
⑤ ウサギについて
ウサギの雌雄を区別できず、混在させて飼育している学校が半数以上である。雄の去勢を行っていない学校が多いので、増えすぎが問題になっていると考えられる。
⑥ 相談状況について
病気の予防・衛生管理に関心は高いが、約6 割が実際相談するまでには至っていない。鳥インフルエンザと飼育動物に関する正しい知識を得る機会もないまま、鳥類の飼育をやめたと考えられる。

【今後の課題】
① 現在、最も多く飼育されているのはウサギであるが、ウサギの生物的な特性に応じた飼育(繁殖しないように雌雄は隔離・雄の去勢)がなされていない場合が多いので、学校の担当の先生に生物的な知識を知っていただく機会が必要である。
②「長期休暇中の飼育」について、担当教師の負担に頼っている状況があり、地域社会の連携などを考える必要がある。
③ 鳥インフルエンザ、経費不足などで、小学校での飼育動物の維持が難しくなっている状況がある。
④「生命の尊さや責任感の学習」のために生活科や理科で利用しているという返答だが、児童にとって小学校時代の飼育動物の印象は希薄で、実際には関わりが少なかったと判断できる。
⑤ 一回の調査では、飼育状況の変化がとらえにくいので、5 年後、10 年後に再度調査する必要がある。
⑥ 幼稚園や中学校、高等学校についても、飼育動物について調べたい。

  • 投稿者 akiyama : 20:32

最近の記事

論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(15)科学教育への思い
科学教育への思い  私自身は、大学卒業時に研究を志すものの、経済的な理由で大学院進学をあきらめ、高等学校の教員として就職した。40歳過ぎた頃休職して修士課程は修了したものの学位の取得は断念していた。そんな時、大学の先生から「研究できる環境がないなら、高校に研究できる環境をつくればいい」と紹介されたのがSSHだった。 SSHは、生徒の科学研究だけでなく、教師である私にも科学研究の機会を与えてくれた…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(14)グローバルな視点で理科教育を考える。
グローバルな視点で理科教育を考える  「なぜ銃を与えることはとても簡単なのに、本を与えることはとても難しいのでしょうか。なぜ戦車をつくることはとても簡単で、学校を建てることはとても難しいのでしょうか。」 2014年、17歳でノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんの言葉である。彼女は"女性が教育を受ける権利"を訴え続けてきた。今も、女子だからという理由で学校教育を受けられない国…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(13)「発表者が女子だけ」の課題研究発表会を企画
「発表者が女子だけ」の課題研究発表会を企画  「女子生徒の理系進学支援」の一環として、"科学研究"の成果を研究の途中段階でも気軽に発表できる場として、"発表者が女子だけ"の「集まれ!理系女子・女子生徒による科学研究発表交流会」を2009年から開催している。最初は、近隣の福山大(広島県福山市)を会場にしていたが、年々参加者が増え、2014年度から全国から参加者が集まりやすい場所で開催するようになっ…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(12)教育プログラムの効果
教育プログラムの効果  2015年度のデータ(次の図)で、本研究の対象としている生命科学コースの方が、文理コースより教育活動を非常に高い割合で肯定的に受け入れており、学習に前向きに取り組んでいる姿勢がうかがえることがわかる。また、卒業後10年が経過しても、現在の生活に生命科学コースの教育が影響していると8割以上が答え、好奇心・理論へ興味などが向上したと8割が判断していることがわかった。保護者・教…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(11)「自然探究Ⅰ」からの課題研究
「自然探究Ⅰ」からの課題研究  入学して間もない高校1年生の森林実習は、自然体験が非常に少ない女子生徒に「山に入るとは山道をハイキングすることではなく、山道の雑草をかき分けて林床に入るような体験をさせたい」という方向で企画したプログラムである。当初は「樹木の種類を区別できるようになること」と「森林調査を"体験"すること」を目的にして出発した。4泊5日の森林調査での共同作業、そして共同生活が生徒に…続きを見る
論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(10)テーマはどのように設定したのか。
テーマはどのように設定したのか。   「生命科学課題研究」で、生命科学コースの4つのグループが取り組んでいるテーマは図のとおりである。これらは大学の研究室のイメージで研究テーマを設定している。  「生命科学課題研究」以外の「自然探究Ⅰ」の実習や「生命」のアンケート調査などから派生したテーマも生徒が希望すれば取り組ませている。  「自然探究Ⅰ」の森林調査から、「遷移段階の異なる森林の二酸化炭素吸収…続きを見る

このページの先頭へ