日本動物学会、日本植物学会、日本生態学会合同の”生物系三学会高知大会が、高知大学で開催された。高校生ポスター発表の部に参加し、最優秀プレゼンテーション賞と優秀プレゼンテ―ション賞をいただいた。
■HZP-07(動物分野)
「オオイタサンショウウオの幼生期の生存率に影響を与える原因は何か」
鈴木美有紀,、三宅舞, 竹居セラ, 清野裕子,三村茜、*秋山繁治
【要旨】近年、世界的規模で両生類が激減している。その主な原因として、自然環境の人為的変化や気候の温暖化、ツボカビ病などによる伝染病が考えられている。そのような状況に対して、保護に役立てるという目的で両生類(特に有尾類)の飼育と繁殖に1989年から約20年間、取り組んできた。オオイタサンショウウオについては1997年から孵化から成体まで飼育し、水槽内での繁殖や人工受精にも成功している。
孵化直後から変態までの幼生時は、サンショウウオの飼育過程において特に個体数が激減する時期である。そのため幼生の安全で効率的な飼育を研究目的とし、さまざまな条件下で飼育を行った。今回は密度や餌の与え方などの条件を変えて、個体数の変化や四肢欠損個体の出現率を調べた。その結果、密度が高いほど共食いが起こって四肢欠損個体の出現率が高くなり、死亡率が上昇することがわかった。最終的に、水換えと餌やりが1日1回という飼育条件で最適の飼育方法を見つけることができた。また、これまでの幼生期の観察で、共食い個体(共食いをして巨大化した個体)が出現することが観察されており、これが個体数の激減に大きく影響していると考えられるので、幼生飼育時の行動を高感度カメラで17日間継続して録画し、共食い個体を観察し、行動を分析した。
■HEP-06(生態・環境分野)
「人工林と自然林ではどちらが二酸化炭素吸収能力が高いか」
竹居セラ、清野裕子、鈴木美有紀、三宅舞、永井由子,*秋山繁治
【要旨】多くの生物は酸素呼吸によって二酸化炭素を放出するが、一方で植物が光合成によって二酸化炭素を吸収することによって生態系のバランスが維持されている。近年、化石燃料の消費を中心にした人間の活動によって二酸化炭素排出量が年々増加し、伐採によって森林が急速に減少していることが、自然環境への影響が心配されている。地球的規模で二酸化炭素の吸収する役割という視点で考えると、“森林”はとても重要だと考えられるので、“森林の二酸化炭素吸収能力”を再認識する目的で、2006年から鳥取大学フィールドサイエンスセンター教育研究林「蒜山の森」で、樹木の調査を行ってきた。2006年・2007年はヒノキの人工林で、2008年は自然林で調査を行った。
年輪数から樹齢を、樹高および直径の測定から乾材積を求め、その乾材積から木全体の体積を求めた。また、その質量の2分の1を炭素と仮定し、木全体に含まれる炭素量を概算し、樹齢から1年当たりに固定される炭素量を求めた。さらに日本における1年あたりの二酸化炭素排出量のデータから、そのすべてを吸収するために必要な森林の面積を人工林と自然林でそれぞれ計算した。結果を比較したところ、自然林の方が人工林に比べより高い二酸化炭素吸収能力を持っていることがわかった。自然林は人工林と比べて、樹種が多く、樹高の高低に大きく差があり、その結果として効率よく光合成をおこなって二酸化炭素を吸収していると考えられる。