2003年発行の『水環境学会誌(日本水環境学会)』のVol.26 No.5に投稿した「ため池の脊椎動物(魚と両生類)」から抜粋
両生類の「両生」とは,陸上でも水中でも生きれるという意味ではなく,陸上と水中の両方がないと生きていけない,つまり陸上生活に移行したものの完全に適応できず,陸上と水中の両方の環境を必要とする仲間であることを意味する。日本に生息する両生類は,大きく分けると,カエル目(有尾目)と,サンショウウオ目(無尾目)に分けられるが,種によって水辺環境の利用の仕方は大きく異なっている。
カエル類では,アフリカツメガエル(アフリカ原産)のように成体になっても上陸しないで,一生を水中で過ごす種もあるが,日本で生息する種はすべて,貯化した幼生は水中で成長するが,成体になると陸上で生活する。成体の生活の場は水辺であって水中ではない。ヒキガエルは典型的で,春に池で産卵すると,次の繁殖期まで水辺を離れてしまう。ニホンアカガエルやこホンアマガエルも,繁殖期が終われば,周囲の草むらや林の中に生活場所を移している。
サンショウウオ類は,大きくサンショウウオ科とイモリ科に分けられるが,サンショウウオ科では,さらに産卵する水辺環境の違いから止水性と渓流性に分けられ
る。ため池周辺の環境を利用するのは止水性の種である。西日本では,カスミサンショウオと絶滅危倶II類(VU)に選定されているオオイタサンショウウオがいる。繁殖期に湧水が流れ込むため池の浅い溜まりや水田側溝(止水)に入り,雌は一対の卵嚢を木の枝などに産みつける。繁殖期以外は陸上で過ごしている。イモリ科では,アカハライモリがよく知られているが,成体になっても水中で過ごすことが多く,冬期も水中の泥の中で数百匹が塊になって過ごしていることもある。