生物は、イモリの卵の結紮実験を中心に扱った授業を公開した。イモリの生態の説明→ビデオ教材→幼生や胚の観察→結紮実験の順に授業を展開した。多くの中学校や高校の先生方に参観していただいた。
【教材観】
動物の発生は、「生殖」の結果として、次代の成体になっていく過程であり、その生物を本当の意味で理解するには、その種の特徴を理解する必要がある。発生を観察する教材として多くの教科書がカエルを扱っているが、ここでは発生学史上の有名な実験の多くがイモリの仲間を使ってなされていることと、環境教育の視点(有尾類の保護が問題になっている)を考慮して、アカハライモリを利用することにした。胚の観察だけでなく、シュペーマンの実験の一部を体験することによって、歴史的な実験への親しみを喚起することを目指した。アカハライモリでは、成体を殺傷して精巣を摘出することなく、雌個体へのホルモンによる産卵誘発だけで受精卵が得られ、また、管理の仕方によれば年間を通して利用できるので、発生の実験材料として優れていると考えられる。
【生徒の実態】
2006年から、医学・薬学・理学・農学系(生命科学関連分野)への進学を支援する「生命科学コース」を設定した。対象生徒は、生命科学コースとしての3回目の入学生(高校1年生)である。生物学への興味関心が高い集団であるが、実体顕微鏡による観察は今回で二回目で、技術は未熟な状態である。
【指導の留意点】
イモリの胚を観察に利用するという視点だけでなく、岡山県内の繁殖地での調査映像などを使って、その生物の種としての特徴や生態を意識させるように工夫した。
最初にイモリの野外での生態や繁殖様式を説明
まず、発生の過程をビデオで確認
タイムラプスで記録した自作ビデオ教材
実体顕微鏡で幼生や胚を観察
イモリ胚を縛る実験