口頭発表題目 「サンショウウオの人工繁殖」 1826ノートルダム清心学園清心女子高等学校
1.日本のサンショウウオの現状
両生類の「両生」は、水中でも陸上でも生きられるという意味ではなく、幼生は水中、成体になって陸上で過ごす、つまり、水中と陸上の両方の環境がないと生きていけないことを意味する。両生類は、有尾目(オオサンショウウオ科、サンショウウオ科、イモリ科)と無尾目に大きく分けられる。日本に生息しているサンショウウオ科(サンショウウオと略記)は、18種である。
孵化したサンショウウオの幼生は、鰓呼吸をしながら水中で生息する。変態し肺呼吸ができるようになった成体でも、ほとんど水辺を離れない生活をしている。卵や幼生段階でその多くが他の動物によって捕食されるため、生活史の初期段階生存率は低く、成体になってからの高い生存率と長い寿命が種の存続を維持しているといえる。繁殖可能な成体は、多くの犠牲を払い生き残った貴重な個体ということになる。
2.生物部の研究
人為的な圧力が、世界的な規模で両生類の生存に大きな影響を及ぼしていることが話題になっている。私たちにどのようなことができるか考え、サンショウウオの人工繁殖について研究を始めた。この研究は、カスミサンショウウオ(1989年~)と絶滅危惧Ⅱ類のオオイタサンショウウオ(1999年~)について、“幼生の飼育”と“繁殖方法の確立”を目指して取り組んできた。
“幼生の飼育”…自然界では、捕食・水量の変化・水質などが影響する。幼生の死亡率が高いことから、飼育下で、密度・餌の与え方・共食いの生存率への影響を調べ、人為的に保護する方法を探求した。
“繁殖方法の確立”…水槽での“自然産卵”や飼育個体から卵と精子を採取しての“人工受精”に挑戦した。“自然産卵”には、隠れ家になるような自然を模した環境が必要であることがわかった。また、“人工受精”では、繁殖可能になるまで2年以上必要であることや、卵は摘出後、1日以上受精能を保持することがわかった。
現在、低温条件の影響、成長の性差や雌雄を決定する遺伝子についても実験を進めている。