「再生」とは体の一部が夫われても、もう一度、ときには二度三度と、元のような姿、形を修復する生物現象のことです。
皆さんも一度は聞いたことがあると思いますが、「トカゲのしっぽ切り」という現象があります。この現象はトカゲという爬虫類に見られるきわめて珍しいものであると考えられがちです。
確かにヒトではある器官、手とか足を失った場合に再生はしません。しかし、ヒトであっても傷が治るというのは重要な再生現象なのです。この現象は決して珍しいものではなく、すべての生物に備わった生命を維持するために基本的に重要な性質だと言えるのです。一般的には下等になるほど、また発生の早い時期のものほど再生能力は高く、ヒトを含めた哺乳類のような高等動物の再生能力は全生物界を通じてもっとも低いものなのです。そこで、私たちはとかくこの能力のめざましさ、生命維持における必須な意義を見逃しがちなのです。
私たち再生研究者は、今述べてきた“動物の再生現象やその仕組みを解明しようとする学問”を「再生生物学」と呼んでいます。
最近、生物が基本的に必ず持っているこの再生能力を、何とかして発揮させて、これまで治らなかった病気を治そうとする「再生医療」に非常に注目が集まってきました。”21世紀の医療の中心は再生医療である”とも言われるくらいです。
現在臨床応用が始まっているか、近い将来多いに利用が期待されているものに、万能細胞(胚性幹細胞、ES細胞)や間葉系幹細胞があります。これらの細胞はほとんどすべての細胞種になれる性質を持っているため、体の外で必要な細胞に増殖・分化させてもう一度患部に移植するか、幹細胞を患部に注入して増殖・分化させて病を治そうとするものです。
私たちは新聞やテレビで”再生医療は夢の医療である”と思ってきました。確かにこれまでの医療に比べて、素晴しいところがたくさんあります。しかし本当に現在考えられている幹細胞の移植が再生医療のすべてなのでしょうか?もともと再生や幹細胞という言葉は生物の再生現象からきたものですが、医療の臨床応用にまで視界が拡がったいま、再生生物学の出番は無くなったと言っていいのでしょうか。
演題は”再生生物学から再生医療の未来を探る”
イモリの肢の再生の様子
イモリでは多くの器官で再生可能
イモリの脳は再生するか
いろいろは研究のアイディアについても、解説していただいた。