発生生物学の研究の考え方について、「形とは何か」という演題の講演であった。
「かたち」という言葉を直感的に受け入れることは容易であるが、では「形って何?」と聞かれたら説明に困る。小さい頃から普通に使ってきた「かたち」という言葉の意味を理解していないことに気付き愕然とする上に、私は「生きものの形」を研究しているので、その研究対象を説明できないのでは研究者としては極めてマズイ。だからと言うのも変な話だが、「かたち」について少し考察しておく気になった。
「かたち(構造)」と対をなす言葉として「はたらき(機能)」がある。これらはどのように異なるのだろうか?まず思い当たることは、「かたち」を対象とする場合には時間を止められることであろう。形態学、すなわち生き物のかたちを解析する学問の基本的な方法論は「固定」である。ホルマリンなどで生物試料を固定し、動かなくなったものを染色したり切ったりしてその構造を「見る」。逆に「はたらき」は、決して時間を止めることができない。はたらきとは、一定時間を挟んで起こった差異を見るからである。もし、時間だけが経過しても差異が生じない時、そこには「はたらき」はない。もし仮に、一定時間が経過しても、世の中の物事全てに全く差異がない場合には、時間そのものが止まっていることと、論理上は、なるはずである。・・・・・・・
「かたち」と「はたらき」について違い
ツメガエルの発生の仕組みを解説
ダーヴィンの進化論について再考察