1986年4月7日2年D組学級通信「風と谷」の第1号は以下の引用で始まっている。
かつて栄えた巨大産業文明の群れは
時の闇の彼方へと姿を消し、
地上は有毒の瘴気を発する
巨大菌類の森・腐海に
覆われていた。
人々は腐海周辺に、
わずかに残された
土地に点在し、それぞれ
王国を築き暮らしていた。
・・・風の谷・・・・・。
そこは人口わずか500人、
海からの風によって
かろうじて腐梅の汚染から
守られている小王国であった。
「風の谷のナウシカ」より
その後で、クラス担任として以下のように書きました。
新学年をむかえてどんな気持ちでしょうか.高2というと、もう学校の雰囲気はわかってきたし、受験直前という感じもないということで、高校生活を最も楽しめる学年だといえると思います。これからの一年が君たちにとって、どんな一年になるか判りませんが、ホームルームを各々にとって落ち着いて存在できる場として感じることができるように、つくっていこうと考えています。
人それぞれ考え方も違っているし、好き嫌いがあるのも確かです。ぼくが考える理想は、お互いを認めあう関係ができるってことです。人間が感じる苦しさで最も大きなものは、「自分の存在が認められていない」と感じることだと思うのです。「その人がその人のままで存在できる。」ってことが今の社会では結構難しい。むしろ、「自分の存在が認められていない」と感じやすいかもしれません。だからこそ、学校生活で、理想の人間関係をつくる努力をして欲しいと思うのです。与えられた規則・時間割で過ごすだけの学校生活なんてつまらない。「将来の夢」を見つけることができるように前向きに毎日を過ごして欲しい。そして、信頼できる人間関係ができればと思うのです。高校生活は、大学生活への単なる準備時期ではなく、その生活そのものがかけがえのない時で、充実した日々であるべきなのですから・・・。
ちょうど、20年が過ぎ、今年から”生命科学コース”を開設しました。理系の女性として生きるという”将来の夢”の実現に向けて全面的にバックアップする企画として誕生しました。
定員30名の1クラスですが、「中学から理系に進路を考えていないと志望してくれない」(実際は、高校2年生で、文系に進路を変える場合には文理コースに変更可能)とか、「高校時代を女子だけで過ごすのは嫌だ」などの理由で、受験者が確保できないのではないかという否定的な意見もあります。成功の鍵は、文科省指定(SSH)で整備された恵まれた環境で「高校3年間、自立した女性として生きていけるように真面目に勉強してみよう」と投げかけた試みが社会的に認められるかどうかだと思います。生命科学コースは1クラスだけど、学校教育の中で”風の谷”のような役割をもったクラスとして存在させたいと考えています。