飼育下におけるオオイタサンショウウオの繁殖
Reproduction of the Japanese Salamander Hynobius Dunni in Captivity
秋山繁治(清心女子高)
繁殖技術の確立は、研究材料とする際に重要であると同時に、種の保護を講じるためにも必要である。オオイタサンショウウオ(大分県国東市産)について、卵から飼育した成体での繁殖を目指して1997年から飼育してきた。飼育個体(2005年2月230匹・2006年2月194匹)の体重・体長・頭胴長を記録し、2006年2月から3月に人工授精にも取り組んだ。体重・体長・頭胴長の記録から、性成熟は、同じ条件で飼育しても、個体差が大きく、成熟したものの割合が年を経るごとに段階的に増加しいく形で進んでいくものであり、早いものでは2年目(成熟個体の割合27%)で成熟することもあるが、増加率が4年目までが大きく、その後小さくなるので、4年目(成熟個体割合92%)で成熟に達することがわかった。また、雄の性成熟の方が早いこともわかった。人工授精にはゴナドトロピン(HGC)注射を用いた。雌は、注射後約3日で卵嚢を排出できる状態になる。2006年は、2年目1匹、3年目8匹、4年目13匹、5年目13匹から卵嚢を採取した。9年目の雌でも性徴が見られることから、9年間は産卵が可能であることも確認した。精子は、雄にHGC注射後、3~4日後に腹部を搾れば精子が採取できる。人工授精は、水に触れさせていな状態の卵嚢に、精子を塗り、その後注水する方法でおこなった。今回の人工授精での正常発生率は最高で9.9%であり、野外での正常発生率(調査地2006年調査96.3%)と比べて、明らかに低いものであった。さらに正常発生率をあげる方法を確立したい。
爬虫両棲類会報第2007巻第一号p59-60掲載