日本にすむ有尾類は,イモリ科,サンショウウオ科,オオサンショウウオ科であるが,岡山県に生息するのは,イモリ科ではアカハライモリ1種,サンショウオ科では,カスミサンショウウオ,ブチサンショウオ,ヒダサンショウウオ,ハコネサンショウウオの4種,オオサンショウウオ科ではオオサンショウウオ1種である。いずれも日本の固有種である。特にオオサンショウオは,両生類としては世界最大の種であり,1952年に国の特別天然記念物として指定されている。
オオサンショウウオは,県北部の標高300m以上の水温の低い吉井川などの主要河川の支流や山地の渓流に棲み、ブチサンショウウオ、ヒダサンショウウオ、ハコネサンショウウオの3種は県北部の中国山地の標高500m以上の森林内の渓流に棲む。教材として選んだアカハライモリ、カスミサンショウウオの2種は,県南部から県北部まで、他種に比べて人里に近い地域に広く分布している。
成体を捕獲することは,個体数が限られた生物集団では,自然環境での生息数の減少につながる場合があるので、できうる限りさけたい。特に,カスミサンショウウオなどの小型サンショウウオについては,岡山県では1つの生息地の個体数があまり多くないので影響は大きいと思われる。また、その生息数は、1匹の雌が1年に1対の卵嚢しか産まないことから、産卵された卵嚢の数の半分の数が産卵に訪れた雌の個体数であると推測できる。行動範囲も狭く、産卵場所も毎年一定しているので、産卵が少ない場所は個体群が少ないことを意味する。
1989年から有尾類を調査してきたが、これまでに、個人で調査できる限られた範囲でも、5カ所の繁殖地が失われている。それぞれの具体的な原因は、学校敷地の整備工事、河川改修工事、観光地の整備工事、体育館の建設工事、道路整備工事など大規模な生息環境の変化である。その他にも、成体や卵嚢を確認できなくなった箇所が数カ所ある。
有尾類は、湿地を含む水辺に生活している。今まで、湿地は農業にも向かない、建物も建てにくい、利用価値の低い場所であった。また、自然観察を目的とされた場所も、開発からはずされていることが多かった。しかし今では、あまり目を向けられることの少なかった山地の湿地も、ゴルフ場建設の対象になったり、自然観察の場所も、より多くの人が出入りできるように、改修工事がされるようになった。自然観察路も、整備補修されてきている。その中で物言わずひっそりと生活している小型の有尾類の仲間達が少しずつ、その数を減らしている。