清心女子高等学校の発展授業科目「生命」で,生徒さんたちとメディア・リテラシーの学びの場を共有した。基本的人権の主体として尊重されるべき18歳以下のすべての人間の権利を謳う国連「子どもの権利条約」で規定する『あらゆる種類の情報にアクセスする権利』を考慮すれば、メディア・リテラシーを獲得することは、メディア社会へ参画するためのパスポートであり,かつ、メディア情報を意識して対応するためのツールでもある。当日は、メディアが提示する社会観や価値観を分析し明らかにしていくための授業を組み立てた。こうしたメディア分析を経験することが、自己や社会に対する認識が形成されてきた背景 (根拠と過程) を問い直す契機になるからである。メディア内容を客観的に分析し、クリティカルに読み解き意識化することや,そこから発展して主体的に読み,創造的表現を生みだしていくことが,授業の目的であった。別の言い方をすれば,多角的視点をもつこと、異なる意見にも耳を傾け,発展させ,さらに考えること、等がメディア・リテラシーを学ぶ価値といえる。授業後提出されたレポートでは、それまで「生命」の授業で培ってきた考え方や価値観にメディア・リテラシーが持ち込まれたことで、能動的に人の話を聞き、主体的に発言し、思考することによって、新しい認識、知識を生みだしていく楽しさが述べられていた。時間の都合上,メディア・リテラシーのわずか一部の経験的学びではあったが、分野の境界を越え,「生命」の授業全体から得る「生きる」ためのスキルは、一人ひとりの将来の勉強や研究活動において応用し向上させることができる。今回の授業が,そのようなスキルを獲得するヒントになれば幸いである。
メディアフォーラム 乙竹文子