アカハライモリの受精は、貯精嚢に貯えておいた精子を使った体内受精であると述べましたが、有尾類の約90%の種は体内受精をしています。両生類というと、カエル(無尾類)を思い浮かべられることが多いですが、体外受精をし、幼生として変態するまでの時期を水の中で過ごし、陸に上がって性成熟に達するというのは、今回紹介しているカスミサンショウウオを含むサンショウウオ科とオオサンショウウオ科だけです。
また、アカハライモリは、多精(一個の卵に多くの精子が入っていくタイプ)だと紹介しましたが、カスミサンショウウオはカエルと同じように、単精(一個の卵に一個の精子が入るタイプ)です。受精した卵は、卵膜の中で、卵割(細胞分裂)をして、2個、4個、8個、16個と細胞を増やしていき(写真9)、表面が滑らかなボールのようになった後で、それぞれの細胞が大きく動き出して神経、目、外鰓をつくり、幼生になっていきます。産卵後、3~4週間で卵膜を破って、卵嚢内を動くようになります。孵化した幼生は、イモリの幼生と同じくバランサー(平均体:幼生期の初期に身体の平衡を取る役割をする)をもっていますが、2週間程度で脱落します(写真10)。幼世紀は主に小さな水生昆虫などを食べて変態に向けて成長していきますが、動くものであればなんでも噛みつくため、幼生どうし共食いをすることも多く、自分たちの仲間を栄養源の一部にしています(写真11)。
写真9.4個、8個、16個、32個と分かれていく状態
写真10.外鰓やバランサーができている状態
写真11.孵化を始めた幼生
幼生は、6~8月に変態して陸上生活に移行します(写真12)。飼育下で2年目から産卵が見られたことから、孵化後2年程度で性成熟し、産卵場に出現すると考えられます。幼体、成体は昆虫やクモ、ミミズなどの小動物を捕食しているようです。冬期は、瓦礫や朽木、腐食土の下で越冬しています。
写真12.変態直後の亜成体