2000年にだされたレッドデータブック(※)に京都・大阪地域の個体群が「絶滅のおそれのある地域個体群(LP)」として、保護の対象に取り上げられています。その原因は大規模な土地開発による生息地の消失と、それにともなう汚水の流入などの環境悪化、減反による 水田の乾燥化、そして、ペットとしての捕獲、アメリカザリガニや外来の捕食性魚類による捕食などがあげられていますが、このような状況は、保護対象となった個体群だけでなく、各地の止水性サンショウウオを取り巻く状況でもあります。
水田側溝のコンクリート化が進み、コンクリート製のU字溝が、陸上と水域を分離する「死のトラップ(落とし穴)」になっている例が報告されています。私自身も岡山市湯迫で、乾燥化したコンクリート水路の底にカスミサンショウウオの死体を見つけたことがあります。産卵場に使われていた素掘りの水路は乾燥したコンクリート水路になってしまうと、工事後数年間は、生き残った成体がしばらくは産卵にきますが、徐々にその数は減少していくのが常です(写真13,14)。
写真13.工事前:素掘りの水路
写真14.工事後:コンクリート化された水路
次にゴミの投棄によって生息地が汚染される場合があります。産卵に使われる場所は、人里離れた環境であることが多いのですが、そんな場所ほど不法投棄の場所になりやすいのも事実です。実際に岡山市内の産卵場所に、冷蔵庫や自転車、バイク、瓦礫などが投げ込まれている状況があります(写真15)。大型ゴミ引取りの有料化の煽りを小動物が受けているのです。
写真15.生息地へのゴミ投棄(岡山市)
さらに、岡山市内でもペットショップでカスミサンショウウオが売られていました。人間のペット指向の多様化を受けて、これまで家庭で飼育されることが少なかった両生類すら乱獲される可能性があるのです。
人里に近い環境に棲んでいるがゆえに、近年、道路や水路の工事や圃場整備などの人間の生活に関するものの影響を受けて、生息地を激減させているサンショウウオの保護を考えていくと、効率化を優先してきた現代社会とのシステムそのものの問題点までみえてくるかもしれません。
※環境庁編。2000.改訂・日本の絶滅のあるおそれのある野生生物 -レッドデータブック- (爬虫類・両生類).120pp.