男性は精巣をもつように遺伝子が働き、女性は卵巣をもつように遺伝子が働くのではない。遺伝子レベルでの性決定では、ヒトの身体の基本は女性であり、Y染色体に含まれる遺伝子が働かなければ女性になる。つまり、そのままなら女性の身体になっていく運命をY染色体に含まれる遺伝子が男性に変更していくのである。
性腺として、男性では精巣、女性では卵巣をもっており、それぞれ精子、卵という生殖細胞をつくっているが、性腺も胎児期のごく初期には分化していない。卵や精子のもとになる始原生殖細胞は、5週目に生殖巣原基(将来の卵巣や精巣)に向かって移動する。こうしてできた男女共通の未分化な性腺は精巣決定因子が働くと、精巣に分化し、働かないときは自律的に卵巣に分化する。男性の場合は、始原生殖細胞が1回分裂した状態で、青年期まで休眠する。女性の場合は、移動後分裂して20週目に680万個の卵原細胞になるが、卵原細胞の多くは退化し、青年期には40万個に減少している。これらの細胞は、減数分裂の第一分裂で休止しており、排卵の直前に分裂を再開し、分裂をしながら卵管にでていくようになる。