「性」とは何なのか。生殖細胞に雌性と雄性の分化が見られるときに、それをもつ個体の特徴を「性」という。アメーバのように「無性生殖」をする単細胞生物には性はないが、高等なものほど雌雄の特徴が顕著となる。性が分化すると「有性生殖」が行われ、親とは違った遺伝子の組み合わせをもった子孫(新個体)が生まれる。
「無性生殖」では、遺伝子構成が変化しないのでまったく同一の形質をもった子孫をつくるので、良い環境下では能率のよい方法であるが、その反面集団のすべてが同じ素質をもつために、悪い環境に遭遇した場合は、環境に適応できず、全滅する危険性をもっている。「有性生殖」では、接合(受精)という遺伝子を混ぜ合わせて交換するしくみがあるので、多様な遺伝子の組み合わせをもった、つまり多様な性質の個体がつくられるという利点がある。長い進化の歴史では、幾たびかの大きな環境変化があったが、その変化に対応できた個体が生き残り、現在までに大きな進化を遂げてきたと考えられる。現在の地球上で反映している多くの高等生物たちは有性生殖で繁殖している。
「有性生殖」は環境への適応という点で優れており、その有性生殖を有利に進めるためには、細胞レベルでさらに進化したと考えられる。有性生殖では2つの生殖細胞が接合するが、藻類などの生殖細胞は、雌雄の細胞にほとんど差がない。それが、哺乳類などの高等生物になると、卵と精子という二形に分化している。その理由は何故であろうか。それは、2つの生殖細胞が、出会う機会がなるべく多くなるように、そして、接合した後に大きな生命力(エネルギー)をもてるように進化したと考えられる。つまり、動き回れる身軽さをもった精子と大きくて栄養分をたっぷり蓄えた卵とに分化したのである。したがって、生物的な性には、雌雄の2つの「性」が存在していると考えられる。卵をつくる個体を雌(人間では女)、精子をつくる個体を雄(人間では男)という。
有性生殖は2つの「性」が必要であり、細胞レベルから個体レベルにまで、形態・機能・行動的に二形に分化している。個体は、成長とともに分化(性分化)していくものであり、基本となる細胞レベルの分化だけでなく遺伝子(染色体)、性腺、性器、脳、社会的に獲得したものにいたるまでいろいろなレベルで分化している。