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授業「国際情報」と本校の情報教育

1999年10月12日

はじめに
 文部省の調査によると、平成9年3月末で、高等学校でのコンピュータ普及率は100%、校内LANの設置も60%を超えている。文部省の2001年までにすべての学校をインターンネットに接続するという方針を受けて、全国的に公立・私立を問わず、コンピュータ設置台数を充実させる動きがでてきている。本校でも1997年度から整備が始まり、1998年4月の段階で、2つのコンピュータ教室に合計で48台の生徒用コンピュータを整備した。独自のサーバーを設置して専用線でインターネットに接続できる環境も整えた。今年後からは、これを利用して、高校1年生に「国際情報」という授業が週1時間行われている。本報告は、本校の情報教育のこれまでの経緯と、1年間の「国際情報」の授業について報告したい。

1.授業「国際情報」の誕生
 文部省は、1998年7月の教育課程審議会答申を受けて、1998年12月14日、中学校学習指導要領を告示し、2000年度からの移行措置を経て、2002年度から全面実施するとし、高等学校については本年度中に告示を行い、2003年度から学年進行で実施するとしている。2002年度からの完全学校週五日制に対応して、学ぶ総量を減らしたうえでカリキュラム編成の自由化をすすめた内容になっている。「自由化」、「スリム化」、「コンピューター」が、改定の特徴を表すキーワードになっている。
 本校でも、独自に教育改革のためのプロジェクトチーム(1994年7月から1996年8月)を組織し、これまでの教育内容の再検討を行い、新学習指導要領の改定が告示される直前の1998年度から教育課程を大きく改定した。そして、コンピュータとインターネットを取り入れた授業「国際情報」と自由選択科目「発展科目」(高校の学習範囲を超えた内容を生徒自身が選んで学習する授業で、広範囲な内容を含んでいる)が誕生した。「コンピュータ導入は受験指導の邪魔になる」とか、「授業の枠を超えた授業は冒険的過ぎる」という意見もあったが、新指導要領での「情報」と「総合的な時間」の誕生が追い風になり、1998年度から年次移行で実施されることが決定した。

2.情報教育を取り巻く状況
 勤務校に私が赴任した翌年(1984年)から、本校の入試処理がコンピュータによって行われるようになった。当時は、BASICで組んだプログラムで、約1000人の成績処理と印刷をして、慣れない作業で夜中までかかることがあった。あれから15年経った現在では、入試処理だけでなく、生徒の個人成績処理や通知票・成績伝票の作成にいたるまで多くの場面で利用されるようになった。定期テストの問題もワープロソフトを使った活字になった。今やコンピュータが誰もが利用する道具になろうとしている。ここで、簡単にコンピュータの歴史を振り返ってみたい。
 一般の人々にコンピュータというものが身近に意識されたのは、ほぼ20年前である。1980年頃に、理系やメカ好きの人々を中心にコンピュータがブームになった。8bitから16bit機へ移行したころである。NHKでもコンピュータ講座が放送され、N-BASICというコンピュータ言語で、どのようにしてプログラムを組むかが放送された。当時、シュミレーションに取り組んだ教員もいたが、実際には成績処理や入試処理などへの利用に限られていた。過大な期待があったが、多くのコンピュータが埃を被った状態になったのではないだろうか。1995年にOSとしてWindows95がリリースされてから、再びコンピュータのブームがやってきた。Windows95では、Windows3.1時代から大幅に変更され、視覚的に操作しやすいGUI(Graphical User Interface)が取り入れられ、普及していった。「使いやすさ」を標榜してWindows95は登場した。発売日の1995年11月23日の深夜、秋葉原では購入者が店先に行列をつくり盛り上がりをみせた。しかしながら、盛り上がりに相当するほどに画期的にコンピュータが利用しやすくなったかというと、そうでもなかった。そのため付属のマニュアルだけではわかりにくいと、初心者向けのOSの解説書やWindows95対応のアプリケーションソフトの解説書、雑誌が数多く出版されるようになった。NHK教育で『親子で入門千葉麗子のインターネット』(1997年7月から8月)、『ホームページはむずかしくない』(1998年7月から8月)、さらに、興味はあっても、どのように取り組んだらよいかわからないしりごみしていた先生対象に『しりごみしている先生のための実践インターネット講座』(1998年7月)という番組が放送された。また、1996年頃から、研究者が通信手段として利用していたインターネットが、画像や音も情報交換できるようにということで一般の人々に利用されるようになった。書店にも、コンピュータ書籍のコーナーが設けられ、インターネット、コンピュータ機器、プログラム言語に関する雑誌や単行本が目立つようになった。
 インターネット技術を含むコンピュータの進歩は、学校教育にも影響を与えていった。「国際化」と「高度情報化」をキーワードにして、コンピュータ教育を学校教育に取り入れるべく、6年間にわたる自治体による公立学校へのコンピュータ整備計画(1996年度~)や通産省や文部省による「100校プロジェクト」(1994年度)、NTTによってインターネット接続設備、資金、技術を支援する「こねっと・プラン」(1996年度~)が進められた。また、第15期中央教育審議会一次答申(1996年7月)の中でも、初等中等教育段階での情報通信ネットワークの活用を本格的に進めるべきだとしている。
 インターネットを教育に利用する財政的な措置については、1998年度から計画的にインターネット接続を開始し、2001年までに、すべての学校をインターネットに接続できるようにするとある(1999年1月の文部省ニュース)。具体的には、公立学校のインターネット利用にかかる通信費及びインターネット利用料等(1999年度に中学校は1校あたり年額132000円、高等学校は年額152000円)が地方交付税により支払われる。また、私学についても、マルチメディア助成や特色教育モデル校などで財政的な援助をが行われている。
情報教育の教育課程を考える上で基本になる学習指導要領でも、教育改革に向けて情報教育に前向きである方針がうかかえる。1998年11月18日に、中学校新指導要領改定案が発表されたが、E-MAILの利用まで含んだコンピュータの学習が「中学校技術・家庭科」に必須で盛り込まれていた。また、高等学校でも、新しく「情報」(2単位必修)が新設される。
また、地方の行政でも情報教育を推し進める動きがある。岡山県では、1998年10月に、高速インターネット情報網「情報ハイウェー」に全県立高校79校を接続された。対象の全生徒と教職員57、000人にE-Mailのアドレスを配布し、学校間の交流に活用するとしている。県立高等学校のホームページについては、1997年10月から全高等学校で立ち上げられている。

3.インターネットのもつ性質
 コンピュータを使った授業を「情報教育」として位置付けるのに、インターネットは大きな役割を果たした。ここでは、インターネットというネットワーク・システムとは何か、そして、それがどのような性質を持っているのかを再確認したい。
 インターネットは、「Internet」と表記するが、「Inter(相互に)」と「Net(Networkingの略)」で、「世界中のすべてのコンピュータをつなぐコンピュータ・ネットワーク」という意味である。地球上のあらゆるコンピュータと相互に接続できる環境がインターネットであるから、今では、誰でも接続すれば様々なサービス(ダウンロード、メールの交換、ネットサーフィンなど)を受けることができるようになった。しかし、元々は、一般人のコミュニケーションのために生まれたものではなく、アメリカで軍事用ネットワークを作る研究から生まれたものである。中央のホストコンピュータが壊れれば全体が不能になる「集中型ネットワーク」ではなく、一部が破壊しても、残ったコンピュータでネットワークを存続させることができるように考えられた「分散型ネットワーク」でとして開発されたのである。したがって、「分散型」であるという性質上、ネットワーク全体を総括する管理者がいないという性質をもっている。それゆえ、いろいろな情報が制御されることなく自由に流れている。また、当初の利用目的は研究者間によるテキストでの情報交換であり、現在のように商品売買に使うことなどは考慮されていなかったのが事実である。セキュリティなどの問題もある。TCP/IP(通信上の約束)を基盤にした通信が、新しい通信手段として優れていたから一般の人々が使うようになったというものである。また、HTMLやブラウザソフトにしても、優れていたがゆえに結果として世界的な標準になったのであり、徐々に環境が整い標準化し、世界中に広がっていった。
 それゆえ、現在でもいろいろな問題点を含んでいる。システムへのウイルスの感染の危険、有害情報へのアクセスする危険、著作権の侵害、などがあるが、特に、情報発信の面での注意が必要である。インターネットは「通信」の範疇に入ってはいるが、1対1の「通信」という枠を越えて、不特定多数に情報を発信するという「放送」的な色彩を持っている。したがって、放送(=情報発信)する場合、その責任も問われる場合もあるということである。
 1998年度の大学入試でグループ討議に、「学校教育でのインターネットの利用において、教育上悪影響を及ぼすような情報にアクセスできないように制限することについてどう思うか」というテーマを扱った大学があったという。情報の受け方や発信のし方そのものも、インターネットを教育の中で扱う際の問題となってくる。インターネットは、管理者がいないがゆえに、国境を越えるコミュニケーションの手段になった。教育は、規制で対応するのだろうか。

4.本校の教育課程と授業「国際情報」
 本校では1998年度から始まる教育課程で、1年次に1単位の「国際情報」、2年次に2単位の「発展科目」を設定した。これらの科目は、大学進学者が多い普通科の生徒にこそ、学習に対する興味づけとして、コンピュータを使った情報教育の授業と教科の枠にとらわれない視野を広げた学習が必要と考えた。具体的には、「国際情報」では、インターネットを利用するための基本的な部分を学習し、教科や特別活動などの成果をホームぺージに発表したり、E-mailによる情報交換(中学校での海外研修などの体験が9割以上いるので)ができるようにすることを目的にした。また、これに続く「発展科目」では、テーマ別に14講座(「中国語入門」・「英検・TOFEL講座」・「時事英語」・「アジア学入門」・「生命」・「人間とバランス」・「数学史」・「日本語」・「学園の母・マリア」・「コンピュータと数値計算」・「表現」・「創作版画実習」・「CREATIVE WRITING」・「現代社会と女性」)を設定した。どのようなテーマを設定するかについては、全教員に公募して、事前に高2・高3の生徒に、「実際は下級生が受講する講座だが、もし受講できるとすれば」ということで、アンケート答えてもたった。その希望数と教育方針を考えて決定した。実際には、高校1年の2学期始めに発展科目の説明会が開かれ、シラバスを使って各担当者による説明があり、それを受けて、各自が受講科目を決定していった。
4.コンピュータや周辺機器の導入
 1997年度になってから、生徒用のコンピュータの導入が始まった。機種の選定は、当時、NECが圧倒的にシェアを誇っていたが、将来性を考えて、IBM互換機であるDOS/V機を導入した。また、定番のデスクトップ型を避けて、増設しやすいタワー型を選んだ。1997年9月に24台をスタンドアローンで設置し、11月にはWindows NTをサーバーに使ってLAN接続した。インターネットへの接続については、経済的な負担が大きく、苦慮していたときに、1998年3月から、NTTが専用線(OCN)のサービスエリアを拡大し、利用できるなるという情報が入った。そこで、専用線でのインターネットへの接続が可能になった。
 NTTの専用線接続サービス(OCNエコノミー)導入は急遽1998年2月の段階で決定され、専用線で接続する準備に入った。3月にドメイン(nd-seishin.ac.jp)を取得し、3月に独自にDNS、wwwサーバーを立ち上げ、ホームページを学校のサーバーに移すことがでた。さらに、4月に入って始業式前に、生徒用コンピュータ24台を整備した。
 こうして、新学期の授業開始直前に生徒一人に一台の環境が整った。その後、、5月にmailサーバーも立ち上げ、現在ではe-mailが利用できるようになっている。一年をかけて、「国際情報」の授業とともに周辺機器も整備し、現在は次のような設備になっている。

【現在の設備】(1999.3.1)

・生徒用コンピュータ室1
サーバー機(DEC:Digital Server 3200)2台
教員用コンピュータ(DEC:5510-6300MS)1台、生徒用コンピュータ(DEC:5100-5233MS)24台
イメージスキャナ(EPSON:GT-9500)1台、フィルムスキャナ(EPSON:FS-1300WINS)1台
レーザープリンタ(EPSON:LP-8300)1台、レーザープリンタ(Canon:LBP-320)9台
インクジェットプリンタ(EPSON:MJ-930C)1台
液晶プロジェクター(MITSUBISHI)1台、AVアンプ(SONY:AVU-700)1台
CDR(Logitec:LCW-RW8416)1台、MOドライブ230M(Logitec:LMO-230)1台
タブレット(WACOM:I-600)5台
・生徒用コンピュータ室2
ルーター(YAMAHA:102I)、サーバー機(HEWLETT PACKARD: NetServer LH Pro 6/200SMP)1台、教員用コンピュータ(IBM:T9E)1台、生徒用コンピュータ(IBM:T8B)24台、
イメージスキャナ(EPSON:GT-9500)1台、
フィルムスキャナ(EPSON:FS-1300WINS)1台、レーザープリンタ(Canon:LBP-720)1台、レーザープリンタ(Canon:LBP-320)9台、液晶プロジェクター(Panasonic:TH-L592J)、AVアンプ(SONY:AVU-700)、ビデオプレゼンテーションスタンド(SONY:VID-P100)
ビデオデッキ(SONY:WV-BW2)、MOドライブ230M(Logitec:LMO-230)1台
タブレット(WACOM:I-600)5台

5.「国際情報」について
①方針
 これまでのコンピュータを使った授業は、タイピングやプログラミング、ワープロ・表計算ソフトの使用法の習得、資格取得などの実務に役立つことを目指していたが、「ほとんどが大学へ進学する生徒に対して、コンピュータを使った情報教育で何ができるか」という視点で考え、「1年間かけてホームページを完成させる」という作業過程で、関連内容を学習するということにした。課題として作るホームページは、公園や道路脇、街角にある野外彫刻の紹介するものとした。インターネットを単に資料集めの手段(直接体験を伴わない)として使うだけでなく、自分の足で集める過程を大切にする意味で、身近な野外彫刻の写真を撮影、調査し、作者や設置場所などのデータを整理するという作業を組み込んだ。

【学習内容】
 
1.コンピュータの基礎知識・インターネットの歴史・コンピュータ及び周辺機器について
・コンピュータが、出力装置(モニター、プリンタ)、入力装置(キーボード、マウス、スキャナー)、記憶装置(ハードディスク、フロッピー、MO)などで構成されていること学び、それらの簡単な仕組みを理解する.
・インターネットは、分散型ネットワークであり、管理者がいないという性質をもっている。情報を流す場合のマナーや著作権問題などについて理解する.
・インターネットの歴史の学習には、「NHK特集・21世紀の奔流・インターネットが社会を変える」を利用した。

2.OS(Windows95)について
・windows95の基本操作を通して、マウス、キーボードの使い方を習得する.特に、ウインドウの開閉、電源のON/OFF、FDDの使い方、文字入力の方法について理解する。

3:インターネットの仕組みと利用法
・ブラウザソフト(Internet Explorer)を使って、インターネットの使い方を理解する。サーチエンジンによる検索についても学ぶ。
・ホームページの閲覧、検索を体験することで、情報収集の能力を高め、いろいろな知的活動にインターネットが利用できることを知る。

4.日本語入力の練習
・ひらがな、拗音、促音のローマ字表記の知識を再確認し、出きるだけ早く正確に入力できるようにする。タイプ練習ソフトも使用して、練習する。

5.課題についての野外調査
・公園、海辺、街頭などにある野外彫刻を見つける。
・5月連休及び夏休みを利用して、5点の野外彫刻について写真撮影し、プリントにして提出する。
・提出した野外彫刻について、指示に従って分類する。
・クラス単位で、統一性を確かめるために、分類表で再確認する。

6.ワープロ入力の使い方
・文書を作成するにあたって、フォント、サイズの選択、文字の装飾、など基本的な操作を覚える。
・自己紹介を書き、表現力の有るレイアウトを考え、完成させる。
・表作成や画像の張り込みなどの操作を覚える。 
・作成した文書をFDDに保存したり、新規に読み込んだりする操作を覚える。

7.ワープロを使って課題レポートの作成
・5枚の野外彫刻についてレポートをワープロで作成する。
・写真プリントをスキャナで読み込み、画像ファイルをつくる。
・画像ファイルを加工し、容量を小さくする。
・ワープロで、画像ファイルを張り込む作業をしてレポートを完成する。
・写真の取り込み、写真の入った文書の作成する。

8.ファイル、フォルダ(ディレクトリ)の扱い方
・ホームページのアドレスの意味を理解する。
・エクスプローラを使って、コンピュータのドライブ、フォルダの意味を理解する。
・表示をファイルの拡張子がつく「詳細表示」にして、ファイルの拡張子のついた詳細表示にし、ファイルの拡張子などの意味を理解する。
・ホームページを作るための準備として、FDDにhtm、photo、text、wordのフォルダをつくり、いままでの作業で作った拡張子が、*.docや *.jpg 、*.txtのファイルを、それぞれのフォルダにコピーする。
  
9.HTMLの基礎知識
・HTMLの書き方形式とタグの使い方を理解する。
・課題で作成した文書をHTMLに書きかえる。2種類以上のアプリケーション間のデータがやり取りできることを理解する。

10.情報の意味、情報管理について
・多くの彫刻の写真説明が集まると、そのことによって、彫刻の種類、場所など新しい観点で問題分析ができることを知る。
・ホームページで公表されているものに著作権があることなどを理解し、個人情報の公開についての配慮など、情報社会に生活するために必要な知識を学ぶ。


11.ホームページでの公開
・出来上がったものを本校のホームページ上に公開する。(http://www.shigeharuakiyama.com)
・分析結果をもとにそれぞれの生徒がレポートを完成する。データの分析及び感想を、彫刻家や女性史研究者に批評していただき、まとめとしたい。

③公開授業

高等学校「国際情報」学習指導案

日時  1998年12月1日(火) 4時限 (11:45~12:35)
    1998年12月2日(水) 1時限 (8:45~9:35)
           この2時間の授業内容は同じです。

場所  普通教室棟1階コンピュータ室1・2

学年組 高校1年E組(女子43名)
    高校1年F組(女子44名)

題目  HTMLの基礎知識

配当時間 
1.HTML入門(1時間)本時
2.基本的なタグの知識(2時間)
3.HTML作成演習(2時間)

指導の経過と今後の計画

(全体計画)
Windows95というOSやHTMLの基礎知識を得、さらにワープロソフトHTMLエディタ、画像処理ソフトの使い方を学び、最終的には課題のホームページに使うHTMLファイルをつくる。

(年間計画)
①コンピュータの基礎知識(4月)
②野外での調査及びデータのまとめ(5月)
③ワープロを使って報告書作成(6~9月)
④ファイル、ディレクトリの扱い(10~11月)
⑤HTMLの基礎知識(12~1月)
⑥メモ帳を使ってHTMLでホームページ作成(2月)
⑦まとめ(3月)

本時の題目  HTML入門

本時の目標
①ワープロで作ったレポートをホームページにするプロセスを理解させる。
②HTMLの基本的なタグを扱い、HTMLという言語のイメージを提供する。
③HTMLの例文を与えHTMLファイルとブラウザソフトの関係を理解させる。

本時の指導計画

<応用課題>
前時の復習

ファイルとフォルダについての説明をする。
・ファイルの拡張子の意味
・エクスプローラと使い方
・新しいフォルダの作り方

<作業1>
エクスプローラで、拡張子の種類とファイルの大きさの関係を確認(*.docと*.txtの比較)する。

HTMLの基礎知識の説明

ブラウザソフトを使って、本校のホームページを開き、ソース表示でHTMLの構造・基本的なタグを説明する。

<作業2>
ブラウザソフトを開き、ソース表示を確認する。

<作業3>
ブラウザソフトでURLとファイル構造の意味を確認する。URLやファイル名を直接記入して、ブラウザソフトで開いてみる。

・例文(HTMLのファイル)を与えて、HTMLファイルとブラウザソフトの関係、タグの使い方の一部を説明する。

<作業4>例文を「メモ帳」とブラウザソフトで開いて、タグの意味を確認する。
<作業5>
課題のテキストファイルを例文に張り込んで、「上書き」し、ブラウザソフトの「更新」で表示内容を確認する。

FDDに4つのフォルダ(htm、photo、text、doc)作成できていることを確認する。

Powerpoint97とブラウザソフトを併用して作業の指示をする。

FDDやHDDのファイルをブラウザソフトで見るという作業は、これから生徒が作成するHTMLファイルが正常に表示されるかどうかを確認するのに必要である。「メモ帳」の使い方の理解とともに本時の学習の中心をなしている。

応用課題は、全員が操作的にはできないことが想定されるが、3学期から本格的に学習する気持ちをつながるように指導する。

備考
  使用ソフト 
   インターネットエクスプローラ4.0SP1、パワーポイント97
  準備
   HTML例文、プレゼンテーション用ファイル
  使用機材
   コンピュータ、液晶プロジェクター

④感想
 担当者としては、生徒が、調査とレポートの作成やHTMLの学習に困難を感じ、集団的に拒否しないかが心配であった。よく一年間、取り組んでくれたと思う。下校時間ぎりぎりまでねばり、真剣に課題に取り組む生徒の姿を見ると、教員側の「コンピュータで遊んで、勉強の邪魔になる」とか「コンピュータは軽薄な文化をつくる」とかいう心配はいらなかったのではないかと思う。また、一年間授業を受けても、「コンピュータは面倒で」とか「機械はイヤだ」「もうコンピュータで苦しまなくてもいいから、うれしい」という生徒もいた。
 ソフトだけでなく、ハードにも親しもううと、2回のコンピュータ自作教室を開いたが、集まったのは、教員が多く生徒は2名だけだった。ソフト満載の既製品を買わずに、必要な部分だけ部品交換できる自作機をつくることで勉強したほうが有益だと信じて、参加者を募ったが駄目だった。DOS/V機の自作は自分が思っているほど、一般的ではなかったと痛感した。コンピュータ万能主義で、「何でも新しいものがいい」とするほど、生徒も単純ではなかったということである。

今回の授業で気づいた利点をあげてみる。
 1.生徒に、学習者として謙虚さを身につけさせる。
 2.教員と生徒の人間関係を接近させる。
 3.コンピュータによって新たな人間関係を構築できる可能性がある。
 4.技術が絶えず進歩するので、教員にいつも学習者の立場を体験させてくれる

1について
 自宅にコンピュータを持っており、扱いなれて、少し知ったふりをしても、授業内容を聞いてなかったり、理解していなかったら、できないということが、画面に表示されてしまう。わからなかったら、謙虚に質問するしかない。別に指導したわけではないが、質問に答えて指導すると「ありがとうございました」と多くの生徒が自然に言うのにはびっくりした。授業をはじめた当初からすると、「わからない」、「壊れた」という声が、自分の順番を待って聞こえてくるようになった。
2について
 個別対応しなければならないので、隣に座って教えることも多い。そのためか、教科の授業の時より、生徒は話すことも多くなり、人間関係を作りやすくなる。 個別的な指導が必要であり、今回2人で担当したことは有効であった。
3について
 教科や部活動では目立たなかった生徒が、コンピュータで人間関係ができてくる場合があった。教え合わざるえない状況が人間関係をつくる。また、今後の可能性として、今までの学校では、生徒は運命共同体として、さまざまな出会いを通して、ルールを学んできたが、インターネットによって、人間関係が校外に作られていくことが想定される。そうなると、社会変化の方向性の影響をストレートに受けて変容していかざる面がでてくることが考えられる。
4について
 コンピュータについての知識は、ハード・ソフト両面について、幅広く、しかも進歩が早い。すべてについて十分な知識をもって授業するというのは無理であり、そのため、学習者にならざるをえない。

 文部省が教員(小学校36校・451人、中学校10校・170人)に、「コンピュータ教育」の導入についてのアンケートを実施した。その中に「自分がコンピュータの研修してからでないと、子どもには使わせない方がいい」という意見に対する賛否を問うものがあったが、「そう思うが」が40%、「そう思わない」が31%、「どちらとも言えない」が27%であった。賛成する意見には、知識として「教員>子ども」でなければ、教材として扱わない方がいいと言う考えが根底にある。コンピュータの進歩ははやく、情報教育には、いつも教員が生徒より知識的に優位にたてるという、これまでの立場が逆転しかねないという特徴がある。新しいマルチメディア機器に、若い世代がすばやく対応できるように、コンピュータの知識でも、生徒にすぐ追いつかれ、追い越されてしまう状況がくるのは確かである。ましてや、これからの幼児の頃からコンピュータに触れているであろう将来の生徒にはかなうはずはないことを考えると、必然的に役割が変化してこざるえない。つまり、これまでの「教員から生徒へ、持っている知識を与える」という「知の一方的伝達」ではななく、教師が生徒から学ぶこともあるという、「学習者」の面を持たざるえないことが考えられる。そして、教員の役割は、生徒への興味付けや、方向付けが役割の中心になる可能性もある。
 教員の中には「コンピュータなんていらない、ワープロで十分」という人がいる。そう言っていた人たちの中に以前「ワープロなんて要らない」と言っていた人もいるような気がする。インターネットは、「不必要なチラシの集まり」という人もいる。私の経験で言えば、ワープロができたがゆえに、報告文などを書きやすくなったし、e-mailが利用できるようになって、人間関係も、情報源も広げることができたと実感している。コンピュータやインターネットも、所詮道具であって、より使いやすくなって、その人が必要とすれば自然に使われるようになると思う。「反コンピュータ主義」でコンピュータの導入に反対していた人が、最近では進んで取り組んでいるのを見かけると、「そんなもんだ」とため息が漏れてしまう。
 ある雑誌に、今の企業が求める人材ととしての条件として、次の三つがあげられていた。
①しっかりとした目的意識と意欲をもっていること、②コミュニケーション能力を持っていること、そして、③コンピュータが使えること、である。
 一般的にここで「コンピュータが使える」というのは、ワープロや表計算などのアプリケーションが使えるということを意味している。したがって、現時点では、高等学校でもアプリケーションの使い方を含めた指導が必要であり、教育内容を精選した系統的・効率的なカリキュラムが必要である。しかしながら一方で、今や社会人の多くがすでに利用していることを考えると、実質的に「家電並み」になるのは時間の問題で、そうなった時には、基本的操作についての教育を学校が担う必要があるかどうかが改めて問われる。
 今後の情報教育では、コンピュータを事務的な作業を支援する道具としてだけでなく、さらに、作業者の思考やコミュニケーションを支援してくれる道具として使うことが求められている。新指導要領の内容を踏まえて、どのような教育内容を扱っていくか、再検討する必要がある。

④今後の課題
 具体的に、次の点について具体的な対応が必要と考えられる。

1.新指導要領の内容を踏まえて、「情報教育」の授業の内容をどう変えていくか。
2.生徒のe-mail利用をどうするか。
3.メンテナンス(ホームページの更新、故障、インストールなど)の係への負担をいかに軽減するか。
4.コンピュータの買い替えなどの経費をいかに計画的に準備するか。

4.現在のコンピュータ室の利用状況
 コンピュータ室の利用については、原則的には生徒に開放している(ただし、教員の許可をえることが必要)。利用を勧める方策として、今年度は、高等学校2・3年生には、LHRの時間をつかって、インターネットを利用してもらうために基礎知識の講習を1時間行った。最近では、昼休みや放課後に多くの生徒が利用するようになっている。授業外の利用は、インターネットの利用が多い。また、高3の英会話授業でもインターネットを利用するなど、徐々に利用がひろがっている。
 コンピュータのトラブルについては、MAILサーバーが2回ダウンした程度で、現在のところ、生徒の使用による大きなトラブル(機器の破損、システムの故障、有害ホームページへのアクセス)は、起こっていない。

5.本校のホームページについて
本校のホームページは、1997年9月から開設しているが、独自のサーバーで立ち上げたのは、1998年4月からである。次のような利用を考えて構築している。
 1.これから入学を考えている生徒に、進学選択の参考資料を提供する。(学校紹介)  2.在校生には、授業に利用する。(各教科)  3.卒業生には、学校の様子の報告と情報交換の場をつくる。(同窓会情報)  4.他校との情報交換の場をつくる。(生徒会活動)
 このような項目を考慮して、ホームぺージの全体像を考えた。トップページにすべての大きな項目をつくり、そこから各関連ページへリンクした構造になっている。
 2年前から技術的には進歩のないホームページではあるが、①どんなにハード的に恵まれていない環境でも表示できること、②独自の情報があること、③絶えず更新されていて、情報が新しいこと、これらが重要だと考えて運営している。現在の最も大きな問題は、更新するという作業の負担をどのように分散するかということで、円滑な運営のためには、校内での具体的な組織づくりが必要であると考えている。

最後に  インターネットを教育に利用する場合にいつも話題になるのは、「ポルノ、オカルト、暴力、ドラッグなどの有害情報から生徒を守るということ」と、「未熟な生徒がどんな情報を発信するか判らないので、情報発信を管理しなければならない」という視点である。「有害情報から守る」という視点では、フィルタリングの技術が進歩してきた。そして、情報発信に対しては、ホームページを自由に書き換えさせないという方法で対応しているという話も聞く。しかしながら、セキュリティにも限界があるし、なかなか更新できない情報はすぐに色褪せてしまうのも事実である。生き生きとした教育活動に役立つためのコンピュータ、インターネットの利用はどうあるべきなのだろうか。
 本校のホームページを見た方から、次のようなメールをいただいた。「ところで...、性教育の部屋が『sexuality』となっておりますが、サーチロボットの自動検索にかかった場合、きわめて不愉快なジャンルに分類されるのではないかと、大きなお世話でしょうが心配しております。『ジェンダー』等にされておいた方がいかがかと思いますが・・。」という内容であった。性教育では、「sex」・「gender」・「sexsuality」の用語が明確に区別されて使われ、それぞれ教育的な意味をもっている。しかしながら、有害なアダルト向けの情報を制限するためのシステムでは、「sexuality」が「sex」(雌雄の意味ではなく、性交の意味)と同じ要素を持ったものと解釈されて、「不愉快なジャンル(=アダルト)」に分類されるかもしれないということである。同様に、「同性愛(Homosexuality)」という用語についても同じことが言える。同性愛の人権の問題を真面目に取り上げているページも、用語が同じである限り、興味本位で性情報を扱ったものと区別されるずに、同じジャンルに分類される可能性がある。「有害情報を流さない」という教育的措置が話題になっているが、一方で、このような問題も起こりうる。また、さらに、生徒が情報発信する際には、子どもの権利条約の意見表明権や表現の自由を認める立場と情報を管理・制限する立場が衝突する場合も考えられる。
 情報教育では、常に新しい情報で学習内容を更新する必要がある。このような場合に、その目的が、一定の知識を与えることではありえない。臨機応変に対応できる学習する姿勢、つまり、「どのように学ぶか」という、学び方を伝えることが中心になる。そして、その場合、生徒自身が「何を選択するかを自分で決定し、問題を解決する」という過程が重要である。これからの情報教育でのキーワードは「自己決定力の養成」であると思う。
 コンピュータを使っていることが、情報教育ではない。情報教育の目的は、情報手段を理解し、情報社会のモラルを身につけ、適切に活用して行くことが自分でできるように生徒を導くことである。そして、当面するいろいろなリスクもあるが、それすらも教育に取りこめる度量が教育現場に求められているのではないだろうか。

参考図書

岩谷宏:基礎からわかるインターネット.ちくま新書(1995)
中村正三郎編:インターネットを使いこなそう.岩波ジュニア新書(1997)
佐伯胖:新・コンピュータと教育.岩波新書(1997)
アンドレア R.グッデン:生徒が輝くパソコン教育.NTT出版(1997)
第一東京弁護士会総合法律研究所:インターネット法律相談.アスキー出版局(1997)
深田昭三・玉井基宏・染岡慎一:教室がインターネットにつながる日.北大路書房(1998)

参考新聞記事

朝日新聞(岩尾達男):論壇・高校普通科の情報教育に望む(1997.9.19)
朝日新聞(原実男):論壇・メディア社会に負けぬ子らを(1998.5.5)
日本経済新聞:全生徒にメールアドレス・岡山県交流授業などに利用(1998.9.29)
山陽新聞:マルチメディア室開設・江見商高英語授業などに利用(1999.1.8)
朝日新聞:新学習指導要領・ネット社会に対応、情報実習重視、必修に(1999.3.2)

  • 投稿者 akiyama : 22:24

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論文「科学課題研究」を中心に据えた女子の理系進学支援教育プログラムの開発(10)テーマはどのように設定したのか。
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