1996年6月25日:清心中学校清心女子高等学校紀要.No.12.p1-31
「性教育の日常的実践と今後の課題」
1993年に,岡山県性教育協議会で,教師に対して性教育についてのアンケートが行われた1)。調査されたのは,岡山県内の高等学校19校(476名)である。「高等教育において性についての指導が必要ですか」という質問に対して,「必要である」と答えた人が97%である。
その理由について年齢別にみると,20・30代では39%が「自分を大切にして欲しい」が最も多く,次に「性道徳の低下」が23%であった。それに対して,40,50代では,「性道徳の低下」,「自分を大切にして欲しい」がそれぞれ31%,33%で,二つの理由がほぼ同じ割合をしめている。また,男女別にみると,男性では「性道徳の低下」が32%をしめるのに対して,女性では,「自分を大切にして欲しい」が50%をしめ,「性道徳の低下」は15%にしかならないのが特徴的である。
この結果を全体的にとらえると,女性や若い世代の教師が「自分を大切にして欲しい」という,生徒への直接的な要望をあげているのに対して,男性や年齢が高い世代では,「性道徳の低下」という社会への影響を理由としてあげていることがわかる。この背景には,教育活動についての考え方に大きな違いがあることを示している。それは,教育活動を個人の幸福に最終的に帰結させるものと考えるか,または教育活動を社会に対する役割を果たすものと考えるかの違いを表している。前者からみれば,後者は個人を大切する視点を欠いているというようにとらえられるし,逆に後者から前者をみれば,個人主義だととらえられることになると思う。
このことは,ほとんどの教師が「性についての指導が高等学校において必要である」と考えているが,世代・性別でとらえ方が違い,考え方の違う教師間の共通理解がなかなか得られにくい状況にあるといえる。