(第2節 性教育への取り組み)
高等学校での性教育の取り組み方は,大きく分けて二つある。一つは,性教育委員会や学年団が企画してすすめていくものである。もう一つは,教科の担当者が授業計画の中ですすめていくものである。
前者は,性教育委員会で決められた内容にそってLHRの時間や,特別に設定された時間に実施されるものである。最も一般的に実施されているスタイルは,学年集団という単位で講演を聞いたり,映画を鑑賞したりした後に,その感想をもとにクラス担任が指導するものがある。利点は,今まで性教育にかかわったことのない教師でも,他の教師と共通した内容を扱うということで負担感をあまり感じることなくすすめることができ,また,他の教師とも相談しやすく,経験の浅い教師にとっては教師自身の学習の機会になるという面もある。しかしながら,逆にいえば,指導内容は画一的になりやすく,また他の教師に依存する気持ちをもたせやすいことから,計画する担当以外の教師にとっては,その場しのぎの一過性の取り組みになりやすく,それゆえ,「とにかく実施した」というだけの形骸化したものになりやすい7)8)。
教科の授業を主体とした取り組みについては,系統的な指導ができるのは,家庭科・保健体育科・生物・社会科・倫理など教科が想定される。現在では,性教育の副読本も数社から出版され,指導書や補助教材(ビデオ等)が準備されている。保健体育の「卵子」と生物の「卵」のように,同じ対象に対して用語が異なる場合があったり,重複した内容があったりするので,関係教科での情報交換があれば,より深まった無駄のない授業展開ができる。また,自分の担当教科以外の情報から新たな視点が与えられることがあるので,教師にとってもよい学習の機会になる。
特に家庭科については,従前の1978年に告示された高等学校学習指導要領においては,従来通り女子のみ4単位必修であったが,1989年に公示された高等学校学習指導要領においては,男女とも4単位履修にかわった。このことは,家庭科という授業で,社会生活及び家庭生活を築いていく基礎を"男女共習"できる機会が与えられたとうことを意味している。その背景にはライフスタイルの変化や女子差別撤廃条約との関連がある。