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実際に“触れること”が科学的思考を育てる②

2013年5月18日

動物に直接触れること

 小学校の理科の教科目標には、「問題解決の能力と自然を愛する心情を育てる」という記載がある。また、生活科には、動物飼育が設定されている。そこで、総合的な学習の時間の宿題として、出身小学校を訪問して調査レポートを作成することを課してきた(1999年から毎年実施)。あるレポートに、飼育舎の前に「飼育係り以外の生徒は立ち入らないように」と注意書きの看板がある写真が貼られていた。飼育動物は何のために飼われているのだろうか。生徒たちに、飼育動物との思い出が非常に少ないことも実感した。実際に学校で動物飼育の体験をしているのだろうかとも思い、次の段階として、生徒と協力して、「学校飼育動物」についての現状を知るために、岡山県内の小学校にアンケート調査(2008年)を実施した。
この調査で、飼育状況が明らかになってきた。一例として一番多く飼われているウサギの飼育状況を取り上げると、ウサギの雌雄が区別できない学校が54%、雌雄混合飼育が65%、雄の非去勢手術率が91%であった。飼育数が40羽の学校もあった。ウサギは繁殖力が旺盛で、雄はなわばりをもつという特徴に配慮する必要があるが、現実は、雌雄を区別できない学校が多く、避妊しないで雌雄を混在させて飼っているのがわかった。教師でさえ理解が十分でない状態で飼っているので、困難に直面する場合が多いと考えられる。また、出身小学校に出向いての調査で、卒業生として訪問した学校で、「見せることはできない」と拒否されたケースが10年間調査をして2008年に初めて3件発生している。今の小学校が卒業生に警戒しなければならないような状態にあるのか、飼育状況を見られたくないのか、理由は不明である。
中央教育審議会は、動物に触れる教育で「心の教育」を提言しているが、学校現場では、担当教員の知識不足、飼育経費の不足、飼育作業の負担などが原因となり、飼育を敬遠する流れを生み、鳥インフルエンザなどの社会問題と相まって、飼育動物を激減させる現状をつくっている。高校生に、「家のペットと学校飼育動物では、死んだ時にどちらが悲しいか」と質問すると「ペットだ」と答えが返ってくる。それは、身近に接した時間が長い動物ほど愛着がわくという当たり前のことに起因しているのではないだろうか。ウサギは、避妊・去勢をして、飼育数を2,3匹に制限して飼えば、問題なく飼える生き物である。動物への知識があれば、飼育への負担感も少なく抱きごこちのよい動物として子どもたちの心を育てる存在になる。

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