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『生物の科学遺伝』9月号に「最も身近な有尾類アカハライモリの生態を探る」を執筆

2021年9月 1日

同僚の先生が庭で採取したバナナ状の卵嚢一対を生物教室に持ち込んだのは,1989年3月のことだった。図鑑で調べた結果この卵嚢は、カスミサンショウウオ(2019年にセトウチサンショウウオとして記載)のものであるということが判明した。孵化後、無事に成長し、2年後には約10cm 程度に成長し、生物教室の水槽の中で産卵した。この水槽の中の様子に生徒も興味を持ち始めた。そこで、様々な有尾類を飼育しながら、発生過程や野外での生態を、学生と共に30年以上観察してきた。
今回は、おもにアカハライモリの調査を例に生態的調査の勘どころや、その背景の分析の様子を紹介して、参考に供したい。

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両生類は環境の変化に弱い。その理由は、水辺と陸地との間を行き来して生活しているので両方の生息域が必要であり、その生存が両方の環境変化に影響されるということである。皮膚が薄く、湿度や気温に敏感で、有害物質が侵入しやすいし、卵は殻に覆われていないので、乾燥や凍結、水質汚染の影響を受けやすい。両生類は地球温暖化の最初の犠牲者になると危惧され、"環境のカナリヤ"と呼ばれることがある。
生息数の減少の原因は、生息地の改変や分断化・環境汚染・乱獲・外来種の侵入・気候変動・紫外線の増加・伝染病などがあげられている。2010年のIUCN の集計では、両生類では3分の1の種が絶滅の危機にあるとされている。特に有尾類では、ほとんどの種が希少種になっている。
まず昔と違う環境に着目して、身近なところから見て回ることを続けていくと、生徒自身が気が付くことが出てくる。たとえば、道路や水田に設置されたコンクリート路側溝への転落死が両生類減少の一因となっている(下図)。U側溝は設置に大幅なコストダウンでき、かつ、素掘り側溝と比べて水の浸透による損失が少ないことから、効率的な排水が可能になるので、山地や水田に多く導入されている。しかしながら、このU字側溝によって、落ちた場合に脱出が不可能になって捕殺されたり、生息環境が分断され、行動範囲が制限されたり、水質の悪化を招くなど、生態系に悪影響を与えている。

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