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学校教育にもイノベーションが必要

2015年11月29日

 イノベーション(英: innovation)の略語として「技術革新」が使われているが、現代のイノベーションの意味は新しい技術の開発や発明だけでなく、アイディアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革を意味するものになっている。つまり、それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことを指している。イノベーションを起こせる人材を育てるためには、多様性(ダイバシティ)を認める環境基盤が必要で、本校のSSH事業で教育プログラムを開発の対象となった「生命科学コース」はどのような基盤の上に成り立っている。
 16年前に、私は「清心中学校・清心女子高等学校の展望」(紀要No.13,p33-117掲載)で以下のような意見を述べている。

  実際に教育をめぐるいろいろな局面が変化している。例えば、大学入試の選抜方法でも、小論文の導入や面接を重視した形式が多く取り入れられたり、生涯教育を目指して、社会人に大学や大学院が広く門を開くようになった。そして、教育環境を支えている行政のレベルでも、中高一貫教育や学区再編成など、教育制度の多様化と弾力化を推し進める方針が目立っている。受験の低年齢化する懸念があるが、大きな変化である。
 今までの教育は、高校・大学と教育段階が進むほど、組織的(学科や学部など)には、目的別に細分化されているが、入試制度の設定の仕方や能力の捉え方など全体的に見れば、基本的に画一的であり、多様な教育対象に対して一つの制度で対応してきた。しかし、現代のようにニーズが複雑化すると、これまでの制度では対応しきれなくなってきているのが現実である。以前のように、「良妻賢母」や「立身出世」など目的が限られた時代なら対応できても、現代のように目的要素が幾重にも重なっている状況、例えば、「エリートとして認められたい」「学問的に研究したい」「趣味として楽しみたい」「教養を身につけたい」「就職に役立てたい」「規律正しい生活習慣を身につけたい」など複雑目的が絡み合った状況には対応できない。そして、旧来の画一的な扱い方とセットで最優先されてきた「みんな同じでなければならない」という平等主義もまた、再考が必要になってきている。今までは自由と豊かさを保証するためには「平等」が必要であったが、等質的な「平等」だけでは対処しきれない事態があらわれてきた。今やどんな目的設定をし、どんな教育を供給するかが、個々の学校に問われている。私学では「建学の理念(目的や方向性)が問われている」とよく言われてきたが、そのことは今や私学に限られたことではことではない。高度情報化や国際化、家庭地域の教育力の低下など、教育を取り巻く環境が大きく変化している今の時代は、異なる理念による異なる組織の再構築が必要な時代なのである。

 当時の考え方の延長線上に文部科学省SSH事業で取り組んでいる「生命科学コース」が存在していると理解してほしい。「授業研究」では、問題を解決するために考える過程を重視する。生徒にとって「難しいけれど,取り組むことで満足感を得られる」ような授業を構築することが必要であり、生徒の「前向きに取り組む意欲」をいかに育成するかをかんがえなければならない。生徒の行動をどう変容させるかが課題であり、暗記中心の受身な勉強だけでは、困難に立ち向かって、自ら解決するような「生きる力」をもった生徒を育成することはできない。学校教育で今もっとも話題になっているアクティブラーニングの実践については、ICTを使うとか、KJ法を使うとか、ワークショップの形式にするとかいう方法の問題ではなく、生徒と教師の関係が相互に意見交換でき、相談できるような関係が必要なのであり、もっとも有効なアクティブラーニングは「課題研究」だと私は考えている。現学習指導要領に「理科課題研究」が設定されており、"生徒自らが科学に関する課題を設定し,探究活動などで用いた探究の方法を活用して個人又はグループで研究を行わせ,科学的に探究する能力と態度を育てるとともに,創造的な思考力を養うことを意図した科目である"と解説されている。文科科学省の報告では、2015年度の「理科課題研究」を取り入れている学校は10%である。多くの学校がまず「理科課題研究」に取り組まなければ、学校教育でのイノベーションは期待できないと考えている。「理科課題研究」の展開がその他の教科の「課題研究」に広がることによって、将来に希望をもてる持続可能な社会構築に学校教育が貢献できるのだと思う。

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