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学校設定科目:講演シュペーマンからドリーまで
~私たちのからだはどのようにできるのか?~
(講演のプリントから)
すべての動物は、卵という1つの細胞からその個体を作り上げる。「私達のからだは、どのようにできるのか?」かつて発生の研究をしていたモーガン(1866-1945)は、「カエルの卵はなぜカエルになるのかさっぱりわからない」といって発生の研究をやめ、ショウジョウバエの染色体地図をつくる研究に取り組んだ。 その困難を極めた動物の発生の仕組みについての理解が、この10年で急速に深まりつつある。今日は発生学の歴史をたどりながら生学の最近の進歩 についてお話する。
川崎医科大学 分子生物学教室 西松伸一郎先生
講演シュペーマンからドリーまで
(1)卵と精子が見つかるまで
- アリストテレス(紀元前384-322)
- 生物に対して深い興味を持ち、50種類以上の動物を解剖し540種類に及ぶ動物の形態や繁殖の習性を記録した。霊魂の度合いと発生学上の基準により、温かくて湿った哺乳類と、温かいが乾いた鳥類など、人類を最高として下は無生物へとつながる11段階に区別した。発生に対する雌雄の役割は同じではなく、雌は材料を与え雄は計画あるいは加工を与えると考えていた。この仮説は、中世を経てほぽ2000年の間信じられていた。
- ハーペイ(1578-1675)
- ニワトリの発生やシカの胎児の研究をした。雌ジカの子宮の中で子ジカが形成される様子を見て、ニワトリの胚との類似に気がついた。そして、実際にシカの卵を観察したわけではないが、シカもまた卵から出来ていると確信し、「すべて動物は卵から生ずる」(1651年)と言う言葉を残した。
- グラーフ(1641-1673)
- レンズを用いてニワトリの卵巣とウサギの卵巣を観察し、ウサギの卵巣で始めて哺乳類の卵を見たと報告した。しかし、これは現在グラーフろ胞と呼ばれているもので、形成過程にある卵を含む一群の組織であって卵そのものではなかった。実際に哺乳類の卵が観察されたのは、これから約150年後の1827年のことである。
- レーウエンフック(1632-1723)
- 初歩的な範微鏡を使って精子を発見した(1679)。
(2)前生説
卵と精子の存在がわかったことによって、それらがどのようにして個体を形成するか?と言う問題に移った。
- 精子説:ハルトゼッカーら
- 頭の大きな微小人間(ホルミンクス)が精子の頭部にうずくまっている様を想像して描いた(1694年)。
- 卵子説:スワンメルダら
- 昆虫類のさなぎを卵と見ていたり、発生の進んだニワトリの卵を観察していたために、卵の中に子供が入れ子になっていると考えていた。
(3)後生鋭
- ウォルフ(1733-1794)
- 植物の先端成長域で花や葉がつくられていくこと、またニワトリ胚の発生にともなって血管や腸管が形成されてくることを示し、等質で構造のない成長点や卵から、生命力によって器官が形成されると主張した。植物と動物の発生に共通点を求め、動物の初期胚に現われる層状構造を植物の葉になぞらえた。
「個体発生は系統発生を繰り返す」という生物発生の原則を提唱。ダーウインの「種の起源」(1859)の影響をうけ、数か月の個体の発生過程で数億年を越す長い生物進化の過程が再演されるという説。
(4)最近の研究から
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