ホーム » 『科学技術人材養成等委託女子中高生理系進路選択支援事業』のご案内
岡山理科大学の女子中高生理系進路選択支援事業として、文部科学省の助成を受けて、2006年10月~2007年3月まで期間、「女子の理系進出」を支援する教育活動に協力していただきます。
我が国における科学技術分野への女性の進出は欧米諸国と比べて著しく遅れており、「科学技術創造立国」日本を支える人材供給の観点から、また、男女共同参画社会形成の観点から、その是正は急務であると言える。
岡山理科大学は、本年度採択された「女子中高生理系進路選択支援事業」において、主に女子中学校・女子高等学校との様々な連携事業を行うことを通じて、この問題の解決に寄与したいと考えている。
女子中高生に対して理系進路選択支援事業を行う場合、中学校および高等学校と全面的に連携して授業や学校行事に組み入れた形で行うことが効率的であるが、男女共学校だと女子生徒のみに特化した行事(特に授業)を行うことは難しい面がある。その点、女子校の場合は連携事業が自動的に女子生徒のみを対象としたものとなる。また、女子高等学校は一般に文系色が強い場合が多いので、これを変革することには特別の意義がある。
幸い、岡山県には本年度よりスーパーサイエンスハイスクールに指定され本格的に理科教育に力を入れつつある清心女子高等学校があり、清心女子高等学校および系列校である清心中学校(女子校)が全面的に我々と連携する意思があることが確認できたので、両校との連携を中心に事業を展開していきたい。
同時に、本学の関連校である岡山理科大学附属高等学校および近隣の高等学校とも可能な部分で連携を進めたい。
今回の事業は、連携の条件が整っている環境科学分野と生命科学分野にある程度特化した形で進める予定である。本学には「岡山理科大学環境教育地域支援研究会」という教員組織があり、中学校・高等学校と連携して地域の河川の水質調査等を行ってきた。これまで清心女子高等学校および清心中学校はこのようなタイプの取り組みを本格的には行っておらず、先方も連携に意欲的である。
また、生命科学はもともと女子生徒に人気のある分野である。本学には生命科学に関係する学科が多数存在し、それらの学科には大学院生を含む女子生徒が多数在籍していることも好条件である。
具体的な事業としては、女子中高生と女性大学教職員および女子大学院生との交流ができるよう留意しつつ、講演会、交流会、出張講義、実習・見学の受け入れなど実施する。これらの事業により、女子生徒の科学技術分野に対する興味・関心を高めるとともに、女性が科学技術分野に進む上で参考となるロールモデルを与え、女子生徒の理系進路選択ならびに既に理系を選択した女子生徒の初志貫徹を支援できると考えている。
今回の事業では対象校と対象分野をある程度限定しているが、これをひとつの契機として、今後対象校と対象分野を広げて事業を継続したい。本学には高大連携に熱心な教員が多く、理系分野全体をカバーする多様な学科が存在するので、岡山県ならびにその周辺地域における女子生徒の理系進路選択支援事業で中心的な役割を果たし得ると自負している。
清心女子高等学校、岡山理科大学附属高等学校女子生徒をはじめとした近隣の高等学校女子生徒および教員、保護者を対象として、講演会を行う。講師は2名で、1名は学外から招聘する。学外講師には女性の理系進路選択に関する全般的な話と講師自身のキャリアパスや研究内容について講演していただく。もう1名の講師は岡山理科大学理学部臨床生命科学科講師の工藤芳子で、臨床検査技師の技能を生かした国際貢献(途上国における臨床検査システムの構築の援助)について講演していただく。
講演会終了後に交流会を実施し、参加女子生徒に講演会講師および岡山理科大学女性教員・女子学生と交流してもらう。
外部講師は以下の方に確定しました。
治部 眞里(じぶ まり) 文部科学省 科学技術政策研究所 上級研究官
日程は12月16日(土)の午後になりました。
清心女子中学校および清心女子高等学校の生徒を対象として水質調査に関する出張講義を行う。川の汚れという身近な題材を扱うことで環境科学に関心を持ってもらうと同時に、川の汚れを知るにはある程度の科学的素養が必要となることを理解してもらう。また、事業3(笹ヶ瀬川水質一斉調査)、事業4(生徒主体の水質調査)の内容を紹介し、参加者を募る。
環境問題を考える原点は、地域社会を構成する個々の住民の環境に対する意識にある。例えば、近くを流れる川が汚れているかどうかが気になれば、まず、考えるよりも川に出かけてウオッチングした方がよい。ウオッチングの仕方にも色々あるが、その1つに水質の測定がある。どのようにして測定すればよいのかといった心配はいらない。今では、パックテストなどを用いて簡単に測定する方法が開発されている。得られた測定結果をどのように判断すればよいか。それを周りの人に説明してわかってもらうにはどうすればよいか。このような話を中心に講義を行う。
事業2(水質調査に関する出張講義)で川の汚れに対する関心をもった生徒に、「岡山理科大学環境教育地域支援研究会」が大学生・高校生・中学生・地域ボランティアなどと協働で行っている笹ヶ瀬川水質一斉調査(春と秋)の秋の部に参加してもらい、自ら測定をしていただく。
事業3(笹ヶ瀬川水質一斉調査)に参加して測定手段を体得した女子生徒のうち、自分たちで、さらに近隣の河川等についての化学的・生物学的水質調査を行うことを希望する生徒に対して、「岡山理科大学環境教育地域支援研究会」のメンバーの教員を中心として、その調査計画などの指導を行うとともに、その実施についてバックアップを行う。この調査は清心女子高等学校および清心中学校の科学部部員が中心となって行われる予定であり、科学部の活性化も期待できる。
事業6(分子生物学実習の実施)の参加者に、本学に設置されている水質管理室の見学を行う。水質管理の仕事で活躍する女性職員が見学を担当することにより、ひとつのロールモデルを提示する。
清心女子高等学校生徒を対象として、分子生物学関係の実習を行う。実習前に、DNAとはどのようなものか、細胞内での存在、化学構造、複製、働きについて講義を行なう。また、DNAを研究することで、何を知ることが出来るのか、基礎と応用の両面から説明する。実習では、DNAの抽出、増幅、断片化、塩基配列の決定などを行う。
事業6(分子生物学実習の実施)の参加者に、生命科学の応用としての医用科学について興味を持ってもらうために、岡山理科大学の敷地内にある加計学園医用科学教育センターを見学してもらう。医用科学教育センターには、人工心肺装置、人工呼吸器、人工透析装置、超音波画像診断装置など臨床工学技士を養成するための最新の医療機器が完備されている。医療機器に直接触れ、動作を体験してもらう。
事業1(講演会および交流会)の参加者のうちの希望者などを対象として、臨床検査技師に関する講義、実習、交流会、および、病院見学を行う。講義では、「臨床検査」という仕事および臨床検査技師という資格について講義で説明する。実習では、血液スライド標本による形態の学習などにより、臨床検査と生体について理解を深める。交流会では、昼食を兼ねて講師および臨床検査技師を志す女子学生との交流会を行う。病院見学では、岡山市内の大規模病院内にある検査室を見学する。
岡山理科大学の女性の大学院生等が、清心女子高等学校の生物・化学実験を扱う授業で実験操作の指導を行う。理系に進学し、研究活動にも携わっている女子大学院生が高等学校での教育活動に関わることによって、身近な理系のロールモデルを提示する。
本業務の効果を検証するため、各事業(事業1~9)の後に参加者に感想等を書いてもらう。また、清心中学校および清心女子高等学校の生徒を対象として、全事業の開始前および終了後に進路希望等のアンケート(2回とも同じ質問項目)をとり、意識の変化を調べる。 より広い対象への啓蒙活動として、事業の報告、参加者の感想、女子中高生の理系進路選択を支援する情報などを掲載したホームページを作成する。また、報告書を近隣の中学校・高等学校等に配布する。