聖ジュリーは、万物の創造主である神に対する純真な心と清さと考え、神への感謝と信頼、そして隣人への愛を教育理念の礎におきました。
「心を清くし 愛の人であれ」という日々の指標のもと。感謝と奉仕の心を持ち、真の教養と良識の備わるバランスのとれた女性を理想像としています。
「神に感謝、他人に奉仕、自分に責任」の生活が日々送れるよう、キリスト教倫理や聖書を学ぶ時間があり、奉仕活動やクリスマス会などの独特の行事、外国人教師との日常会話を通じて語学に親しむことで、世界に目を向けることのできる優しく活動的な女性を育成するよう努めています。
(「マザー・ジュリーの教育理想」1960.5.13岡山ノートルダム学園刊より)
世界のほとんどすべての国が義務教育制をとっている20世紀の者には、人々がそんな恩恵に浴しなかった時代があったことは考えられない。といっても、それは事実で、18、19世紀の欧州諸国では下層階級の子女を授業料免除で教育するなどとはかなり新しい思いつきであった。その反面、アメリカではすでに17世紀に公立学校制度が成立していたことは誰しも知っている事実であるが、つまりアメリカは国民教育国庫補助というこの制度を世界中のどの国よりも先に試験的に草分けをしたのであった。
マザー・ジュリーが、いつも、一番先に心がけていたのは革命のための一層ひどい貧困に苦しめられた家庭の子供たちのことで、彼女はこの子供たちが裕福な家族の子女と同じ好機に恵まれることを主張した。現代ではノートルダム会は各階級の家庭の子女の教育に当たっているが、会の創始の一つの目的は、恵まれない子女を教育し、神の愛を教え、幸福な人生に送り出して永遠に救われる道を歩ませようということにあったので、欧州では今なおこの名残として、ノートルダム学園が裕福な子女のための学校、授業料半額免除の学校、全額免除の学校の三本だてになっている。マザー・ジュリーが「貧しい子供たち」と愛唱したのはこの第3の学校の生徒たちであった。彼女がどれほどこの子供たちを愛し、同情をよせていたかをモンティディエの修道院長に書き送っている。
「できるだけたくさん貧しい子供たちをお集めなさい。この可哀想な子供たちは私たちの宝です。神様からおあずかりした尊い宝としてくれぐれも大切にして下さい。神様はこんなにまで私たちをご信用下さるのですから、もったいないことこの上ごさいません。生徒の中でも特にこの子供たちに一番気をつけて親切にお取り扱い下さい。ノートルダム会では寄宿舎のない場合はあっても、貧しい子供たちの学級は是非なければなりません。」
ノートルダム清心学園の創立者聖ジュリー・ビリアートは今から200年ほど前、フランス革命の混乱の中、自ら迫害を受け、また歩行できないという身体の不自由を受け入れながら神を信頼し、ついに貧しい子女の教育事業を始め、勇気ある女性とたたえられました。当時貧しい子女に読み書きや、裁縫、刺繍などの技術を学ばせ、自立して社会をよりよく変革するために貢献できる女性の育成を目指したのです。この教育事業は一国にとどまらず世界に広がっていきました。この社会をよりよく変革するために貢献できる自立した女性を育てるという創立者の精神は、時代と場所が変わっても常に刷新されながらノートルダム清心学園の使命として生き続けています。
時代は21世紀に入り、情報化とグローバル化が新たな問題を生み出し、激しい技術革新の波が人びとの価値観や倫理観を揺さぶっています。このような社会の中でしっかりとした価値観と倫理観をもち、社会に貢献できる女性を育成することが建学の精神を現代にいかすことと考えます。キリスト教精神にもとづいた幅広い教養を身につけることを基盤とし、さらに現代社会で求められる力を持った女性を育成するために、ノートルダム清心学園では2006年度から清心中学校に「英語新プログラム(SELP/NELP)」を、清心女子高等学校に「文理コース」と「生命科学コース」を開設することとなりました。
中学校の「英語新プログラム」では、グローバル化する社会に対応できる英語力の育成を目指しています。高等学校における「文理コース」では、与えられた自分の個性と才能を多様できめ細かな学習活動を通してしっかりと見極め伸ばし、現代の社会で最も求められているコミュニケーション力を備えて、あらゆる分野で活躍できる女性を育成することを目指しています。「生命科学コース」では、今後ますます女性の進出が期待される医学・歯学・薬学などの生命科学分野で、確固たる生命倫理観をもち、高度に専門的な知識・技能を身につけ、将来にわたって社会に貢献できる女性を育成することを目指しています。両コースとも大学進学を目指して学力を豊かに伸ばしていくことは言うまでもなく、しっかりとした価値観としなやかな感性を身につけていきます。
21世紀の社会で真の男女共同参画の実現を目指すためには、力ある心豊かな女性が数多く育たなくてはなりません。2006年度に創立120周年を迎えるノートルダム清心学園 清心中学校・清心女子高等学校では、自立して社会をよりよく変革するために貢献できる女性の育成という普遍的な価値を持つ建学の精神を現代にいかすために、中学校「英語新プログラム」、高等学校「文理コース・生命科学コース」を開設しました。