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先生方から生命科学へ進む女子高生へのメッセージ

京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻 教授 高橋淑子

高橋淑子

あなたは自由な生き方ができる女性になりたいですか?自分で自分のことを決められる女性になりたいですか?「自由」、それはとてもよい響きです。しかし自由を得るには、相当の努力が必要です。職業をもっていきいきと生きるためには、プロとしての高い能力や判断力が求められます。そして他人を思いやる気持ちがなければプロとして社会活動もできません。単に目先の大学入試や就職にとらわれることなく、自分の人生の夢(それが一体何なのか、必ずしも今わからなくてもよいでしょう)に向かって、今できることを精一杯やってみたらいかがでしょう?。学問は、自由な生き方を応援してくれる強い武器です。物事を正しく理解することで、さらに多くを知ることができます。そして人間の本能である、知的好奇心がますます旺盛になります。私は生命科学の分野で研究を行っていますが、毎日新しい発見だらけで、退屈なときは一瞬たりともありません。興味のあることに躊躇することなくぶつかってみてください。きっとその多くは失敗に終わるでしょう。でもそれでよいのです。そこからまた次のステップへの挑戦が始まります。知的に生きること、それはお金もあまりかからず、しかも楽しいことだらけ。あなたも是非、自由な女性をめざして、羽ばたきませんか?

京都大学 大学院理学研究科 生物科学専攻 教授 阿形清和

阿形清和

一度、清心女子高で「プラナリアの再生」の講義をさせてもらいました。女子高での初めての講義だったので少し戸惑いましたが、生徒の講義に対する喰らいつきは良く、手応えを感じた講義でした。われわれの生物学の分野では、女子の大学生や大学院生・ポスドク(博士の学位をもつ有給の研究者)の比率はかなり高いものとなっています。例えば、分子生物学会のポスター発表会場などでは、1列の半分以上が女性の発表ということも良くあります。しかし、研究者として独立している(自分で研究費を稼いで研究室を切り盛りしている)女性の数となると激減します。大学に行くとわかりますが、教授や助教授の女性の数となると、大学院生・ポスドクの女性の数と比べると驚くほど少ないのが現状です。世界的にも、先進諸国といえども、フランスを除きとても半々という数には達していません。理系をめざす女子高生が増えるためには、学問への興味の刺激だけではなく、そのあたりの現状の打破も大きな課題となります。独立した地位が与えられる(自分の好きなことをして生活できる)チャンスが得られるなら、研究者をめざす女性が増えても何ら不思議ではないと思います。そのような状況へと移行するためには、男性の側の意識改革が必要とともに、過度期において優秀かつ逞しい女性の登場が不可欠となります。諸君らが過度期を構成する世代になって欲しいと思っています。

川崎医科大学分子生物学教室 西松伸一郎

西松伸一郎

子供の頃から,その時々に興味のあったものを思い返してみると,どうも私は,何もないところから形ができることに惹かれるようです。幼い時は,砂遊びが大好きで、将来は左官屋さんになりたいと思っていました。中学では建築設計士になりたいと思いましたが,高校時代に物理がダメで断念しました(でも未だに建設現場を見ると血が騒ぎます)。その物理の代わりに選択した生物の授業で,遺伝子は生命の設計図という言葉に刺激され、大学では分子生物学を専攻しました。大学院時代に生き物の発生に関わる研究テーマに巡り会い,現在も研究を続けています。40歳を過ぎて、自分の好きな研究を続けられるということに感謝しつつ,多少今までの自分の人生を振り返ってみて思うのは,それぞれの時代で自分が興味を持ったもの,好きだと感じた気持ちを大切にすることの重要性です。その気持ちを心の中で暖めていると,今は実現不可能と思われることでも,それがどこかへ繋がり,道が開けてくるように思います。どうぞ皆さんも,今自分は何に興味あるのか考えてみて下さい。

福山大学 生命工学部 生物工学科 教授 秦野琢之

秦野琢之

この頃は、いろいろなメディアで「ライフサイエンス」という言葉を見聞きする機会が多いと思います。日本語で生命科学ともいいますが、では生命科学とはどんなことを学ぶ分野でしょうか。実は私も100点の答えは出せません。医学、生物学、化学、薬学、食物学、栄養学、農学、環境科学、人間工学、生物工学、ナノテクノロジー・・すぐに思いつくだけでも10以上の学科目が関係しています。まだまだ多くの理系の学問分野が、生命科学には関わっています。それらの分野の知識を総合して、はじめて生命科学が理解できるからです。ライフサイエンスと聞けば、人間の健康とか病気を科学することと多くの人は思うかもしれません。でもそれはほんの一面です。私たちは地球というかけがえのない星の上で生活しています。人類は他の生物(動物、植物、微生物のすべて)とバランスよく生きる術を身につけなければ、その生活を維持していくことはできないのです。したがって、ライフサイエンスは地球環境や、人間の経済活動までを総合した学問分といえるのです。一方、様々な分野の知識が増えれば増えるほど、ライフサイエンスも進化していきます。ナノテクと結びついた新たなライフサイエンスも生まれました。あと5年もすれば、さらに進んだ分野が生まれるでしょう。そういう意味で、私には100点の答えが出せないのです。ところで、ライフサイエンスはある意味で女性に向いた学問であるとも言えます。女の子から女性に、そして将来母親になることを考えると、女性は常に「命」について考える機会が多いと思うからです。新しい世紀の地球を支える、女性ライフサイエンス技術者が増える・・こんな素晴らしいことはない!と、私は思っています。

国立感染症研究所 昆虫医科学部第一室(媒介生態) 室長 津田良夫

津田良夫

私は清心高校教師から長崎大学熱帯医学研究所を経て,現在国立感染症研究所で病気を媒介する蚊の生態と防除に関する研究をしている.大学院生だった頃生態学を学ぶのに教科書や論文ばかり読んでいることに疑問を感じた.私が知りたい自然界の真実は教科書や論文に書いてあるわけではなく,自分が生活している世界の中にあるのだから,道端に生えている1本の草やその上にとまっている1匹のテントウムシを見て,その中にいろいろな生態学的真理を見いだせなくては生態学を学ぶ意味がないと思った.身近にいる虫や草を取り上げて生物学や生態学について語ることができなければ,いくら教科書に書いてある知識であっても決して生きた知識,意味のある知識とは言えない.教科書や論文で学ぶことは重要である.しかしそれらは自然から学ぶための手引き書に過ぎない.常に自分を取り巻く自然界に興味の目を向け,自然と対話して自然界にある不思議の扉を開いて欲しい。

ウィメンズクリニック・かみむら 医師 上村茂仁

上村茂仁

現在、私は産婦人科の医師をしています。志望した理由は全く単純で、父が産婦人科医だったからです。私の軽薄な動機はともかくとして、産婦人科という仕事を通じて思っている事があります。地球上には男性と女性がほぼ半数ずつ存在します。ですから病気になる人の半数は女性なわけです。さらに女性の場合は妊娠、分娩と男性よりは病院を訪れる機会が多いことになります。女性には女性なりの病気がありますが、それだけではなく、環境や成長過程の問題など女性でなくてはわからないことがたくさんあります。そのためには女性医療スタッフが大変重要です。医師、看護師はもちろんですが、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、科学者、研究者・・など、女性だから見えるものがあります。私の大学時代から今に至るまで、周りにはたくさんの生物化学系に進学した女性がいました。そしてそのすべての人たちが、なんとなく医者になった私と違い、非常に生き生きとしていました。生物化学系に進むには資質は要りません、ただほんの少しの興味があれば充分です。皆さんどうですか、女性ならではの仕事だとは思いませんか。

日本臓器移植ネットワーク・常務理事 篠崎尚史

篠崎尚史

清心女子高校の皆様、楽しい高校生活をお送りですか?毎年、「生命」の講義をしていますが、自分自身が理系に生きてきて、本当に良かったと思える人生を送っているので、本日は、皆様にも理系人生が楽しいものであり、興味のある方には是非、この道をお勧めしようと思います。理系と言っても、私の印象では、生物学はどうも「国語的要素」が強く、物理、科学は「数学的要素」が強い学問であると思います。私は生物学と物理学の両方の大学を学びましたので、その違いに愕然としました。それ以外でも医療系で医師、看護師や臨床検査技師、あるいは生物学の研究者として、環境学や分子生物学、製薬等様々な分野があります。物理、化学系でも核物理学や天文学、塗料から高分子ポリマーまでそれは多岐に渡ります。2045年には国民の三分の一が高齢者で、皆様が社会に出て第一線で活躍するころには、なんと2200万人の労働力が不足します。海外からも労働者を受け入れなければ、日本は機能しなくなります。その中で日本の優れたところをさらに生かして、国際社会に貢献しなければなりません。科学立国日本を目指して、さあ、皆さん、理系人生へ飛び込んできてください。

彫刻家 西平孝史

西平孝史

良いはなむけの言葉が見つからないので私事で恐縮なのだが。彫刻に命を吹き込むことをライフワークにしている私。制作アトリエに時に来客がある。年齢も性別も社会的立場も多様であっても、どうやら2パターンに分かれるのが実に面白い。こられた途端用件の話が始まり,周囲の作品に興味を示さない人達と、それとは逆に作品群に感動し、一時満たされた気持ちになっているのだろう、楽しい笑顔と良好で前向きな感想を述べ、椅子にやっと座る人たちの2パターンである。主宰である私は、命を吹き込んだ作品を鑑賞すること、、鑑賞者の”命の輝き”に作品が共振したのだと思っている。精一杯目を見開いて”命の輝き”を見つめてください。

琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設・教授 山城秀之

山城秀之

沖縄からの応援メッセージ!
みなさんこんにちは、研修旅行の際のサポートをしています自称サンゴ研究者の山城です。金にも名誉にも縁のない生物研究者(秋山先生)からの依頼は断れません、理系へ進む女子高校生へエールを送ります。自分で手に入れたデーターを見ながらああでもないこうでもない、あっ!こういうことか、と多少おたくの生活はなかなかのものです。これからの時代、生命をどう見つめるか・壊れ行く環境をどう守るのか等、一筋縄では行かない問題が出てくるでしょう。対処する手段・分野は多岐に渡ります。混沌とした世の中だからこそ、是非、女性ならではの視点で前を見つめて進んで下さい、期待しています、GO AHEAD!

メディアフォーラム 乙竹文子

乙竹文子

清心女子高等学校の発展授業科目「生命」で,生徒さんたちとメディア・リテラシーの学びの場を共有した。基本的人権の主体として尊重されるべき18歳以下のすべての人間の権利を謳う国連「子どもの権利条約」で規定する『あらゆる種類の情報にアクセスする権利』を考慮すれば、メディア・リテラシーを獲得することは、メディア社会へ参画するためのパスポートであり,かつ、メディア情報を意識して対応するためのツールでもある。当日は、メディアが提示する社会観や価値観を分析し明らかにしていくための授業を組み立てた。こうしたメディア分析を経験することが、自己や社会に対する認識が形成されてきた背景 (根拠と過程) を問い直す契機になるからである。メディア内容を客観的に分析し、クリティカルに読み解き意識化することや,そこから発展して主体的に読み,創造的表現を生みだしていくことが,授業の目的であった。別の言い方をすれば,多角的視点をもつこと、異なる意見にも耳を傾け,発展させ,さらに考えること、等がメディア・リテラシーを学ぶ価値といえる。授業後提出されたレポートでは、それまで「生命」の授業で培ってきた考え方や価値観にメディア・リテラシーが持ち込まれたことで、能動的に人の話を聞き、主体的に発言し、思考することによって、新しい認識、知識を生みだしていく楽しさが述べられていた。時間の都合上,メディア・リテラシーのわずか一部の経験的学びではあったが、分野の境界を越え,「生命」の授業全体から得る「生きる」ためのスキルは、一人ひとりの将来の勉強や研究活動において応用し向上させることができる。今回の授業が,そのようなスキルを獲得するヒントになれば幸いである。

沖縄国際大学 金城和三

金城和三

西表での研修旅行に同行し、亜熱帯にだけ棲むオオコウモリをいっしょに観察したり、自然や研究のおもしろさについて聞いてもらったりしています。清心女子高のみんなのノリの良さ、元気っぷりに、「やっぱり今の時代、女性が元気だなぁ!」と眩しい思いにかられながら、大変愉快な時を過ごさせていただいています。
さて、理系コースを選択した皆さんですが、将来の事なども考えて理系を選ぶのは勇気がいりましたか?理系は女性にとって難しい世界?そんなことはありません。「社会への女性進出が少なく、さらに理系となるとより少数派」というのはもう昔の話になろうとしています。あえて生物学的立場からいうと、性差による社会的役割の違いや行動が異なることは動物一般に知られています。でも、それは負の意味での違いではなく、むしろプラスの意味での違いです。人間においてもそうです。自然科学の分野でも女性の方が得意なことは多分にあって、いろいろな人の連携で研究が飛躍的に発展しています。
さあ、皆さんも遠慮なんかせず、将来に向かってがんばれ!

やまね動物病院 山根辰朗

山根辰朗

「生命科学」、文字通り、生命を客観的に見つめ、探求していく学問です。医学や農学、生物学など、多くの学問が生命科学に関わっており、私の専門である獣医学もそのうちの一分野を担っています。私が学生の頃(20数年前)は、獣医学科の7~8割は、男子学生でしたが、現在ではどちらかというと女子学生の方が多くなっているということです。この傾向は、小動物臨床に携わる獣医師の数にも反映されてきており、最近では女性の開業獣医師が徐々に増えてきています。考えてみれば、これは当然のことで、今後もこの傾向は続いていくと思われます。獣医学だけでなく、他の理科系の学問でも女性の割合が徐々に増えてきているようです。性別に関係なく、興味のある人が好きな学問に自由に取り組んでいけることが、その分野の発展につながるはずです。残念ながら、いまだに女性の社会進出を妨害するようなシステムが残っている分野が多いことも事実ですが、それに屈することなく、自分が興味のある道を進んでいってほしいと思います。

総合地球環境学研究所・西表プロジェクト 中西希

中西希

昨年、研修旅行で来られた西表島でイリオモテヤマネコの解説をさせていただきました。女子高校生がヤマネコに興味を持ってくれるのかどうか始めは不安でしたが、いろいろと質問をしてくれる生徒さんがいてうれしかった記憶があります。私は琉球大学でイリオモテヤマネコの生態を研究し、今年の春博士号を取得したばかりです。高校生の時から哺乳類の生態を研究したいと考えていたため、哺乳類生態学を専門にしている先生がいる大学を選びました。同級生の中には自分がやりたいことを専門としている先生が大学にいなかったため、配属先の研究室を決めかねている友人も数人いました。高校生の時に漠然とでも自分が興味のある分野があれば、大学を選ぶ時にどのような研究室があるのか、どのような先生がいるのかを調べて進学する大学を選ぶことをお勧めします。私が大学に入学した時には生物学科だったからなのかもしれませんが、1学年の女子と男子の人数はほとんど同じだったと思います。学部や学科によって女子の数が少ないところもあると思いますが、現在、理系の大学生生活を送る上で性別はほとんど関係無くなっているのではないでしょうか。まず自分の夢中になれるテーマを見つけ、学び、研究してください。

神戸薬科大学 教授 宮田興子

宮田興子

自然科学とは一言でいえば自然界に起る諸現象を理解する学問です.高校では「理科」という科目があり,物理,化学,生物に分かれていますが,これらは自然科学に属します.大学においては,一般的に理学部が自然科学の基礎研究を行い,工学部,医学部,農学部および薬学部等は,応用研究を行います.ノーベル賞受賞者の人数から明らかなように日本の自然科学は非常に高いレベルにあります.さて,自然界の不思議を理解する,すなわち「科学する」楽しさとはどんなものでしょうか.種々の自然現象の解明は「何故?」という疑問を発することから始まります.その疑問点を明らかにすることは困難も伴いますが,目的を達成したときの喜び,あるいはその過程で新しい発見をした時の喜びは,格別です.自然科学を追及していくことは決して難しいことではありません.まずあなたのまわりを見回して下さい.毎日当たり前のように思っている自然現象,でもなぜそのような現象が起こるかわからないことはありませんか.例えば,怪我をしたらなぜ痛いと感じるのでしょうか.また,軽い怪我であればいつの間にか治りますが,それはなぜでしょうか.私が所属する薬学部の分野においてもまだ解明できないことが山積みになっています.これらの未解決事項を明らかにするために,皆さんも大学で「科学する心」を育んでみませんか.

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